◎先月就任したばかりのボルヌ首相は選挙結果を「前代未聞」と呼んだ。
フランスのマクロン(Emmanuel Macron)大統領は19日、再選からわずか2カ月で議会過半数を失い、厳しい現実を突きつけられた。
マクロン氏は有権者に過半数維持の重要性を訴えていたが、願いは届かなかった。
マクロン氏の「共和国前進」率いる中道連合は左翼と右翼に完敗し、国民議会の過半数を失った。
先月就任したばかりのボルヌ(Elisabeth Borne)首相は選挙結果を「前代未聞」と呼んだ。
ボルヌ氏を含む閣僚はパリのエリゼ宮殿に数時間こもったのち、姿を現した。
ボルヌ氏は記者会見で、「近代フランスでこのような国民議会を見たことがない」と述べた。「この状況は、国内的にも国際的にもフランスが前代未聞のリスクに直面しているということを示しています」
ボルヌ氏は20日から連立交渉を開始するとした。
<仏国民議会選挙 開票率100% 定数577>
▽与党連合:245議席(▼102)
▽Nupes:131議席(▲73)
▽国民連合:89議席(▲82)
▽共和党:64議席(▼56)
▽その他左翼:22議席
▽無所属:26議席
メランション(Jean-Luc Melenchon)氏率いる左翼連合「Nupes」と、ルペン(Marine Le Pen)党首率いる極右「国民連合」はマクロン氏の追放を目指しているため、連立には興味を示さないと思われる。
ルメール(Bruno Le Maire)経済・財務相はSNSに、「フランスは統治不可能ではない」と投稿する一方、過半数を満たすためには「想像力」が求められるとした。
議席を73も伸ばしたメランション氏は勝利を祝い、「マクロンを倒す時が来た」と支持者に語った。
大統領選で苦杯をなめたルペン氏の国民連合も82議席伸ばし、歓喜に沸いた。ルペン氏は「マクロンの冒険は終わった」と大喜びした。
ボルヌ首相は56議席失った共和党の協力を期待しているとみられるが、同党も厳しい声明を発表している。
共和党のジャコブ(Christian Jacob)党首は、「マクロンは過激派を冷笑した結果、大きな代償を支払うことになった」と述べた。
公共放送フランス・テレビジョンのコメンテーターはマクロン氏の権力欲を揶揄する以前のあだ名(ジュピター)を引き合いに出し、「彼はもうジュピターではない。彼の2期目は議会交渉と妥協に支配される」と語った。「交渉、妥協、交渉、妥協、この繰り返しです...」
マクロン氏の与党連合は102議席失い、過半数に必要な289議席を大幅に下回った。
投票率は過去最低を更新する46.23%。半数以上の有権者が棄権した。
マクロン氏の盟友も落選している。ブルギニョン(Brigitte Bourguignon)保健相は共和党の候補に敗れ、フェラン(Richard Ferrand)国民議会議長は左翼に大敗した。
左翼大躍進の立役者であるメランション氏は勝利演説で、「この結果はマクロンの道徳的失敗を示している」と語った。「私たちが最も危険なルペンに立ち向かっている時、あの男は知らん顔をしたのです。極右を煽っているのはマクロンですよ!」
メランション氏は自分が首相になる可能性は低いと述べ、「選挙戦の中で自分の立ち位置を見直し、変えようと思った」と熱弁した。「私の公約は、最期の瞬間まであなたの前に立ち、戦うことです」
メランション氏は立候補していないため、首相に選出されることはない。
マクロン氏の共和国前進は5年前、議会にニューフェイスを多数送りこんだ。今回ニューフェイスを送り込むのは左翼と右翼になった。
Nupesの候補者の中には、給与と労働条件の改善を求めて同僚の支持を集めたホテルの客室係もいる。当選を決めたケケ(Rachel Keke)氏は、「元大臣を倒すことができたら議会で踊る」と約束していた。
マクロン氏は食料は燃料費の高騰に取り組むと約束したが、野党はこの主張に異議を唱え、「与党連合を放置すれば人口の大多数を占める低中所得者層はより一層貧しくなる」と有権者に訴えた。