EU、漂流中のロシアタンカーに対応へ、環境災害のリスク高まる
漂流しているのはロシア船籍の大型タンカー「アークティック・メタガス(Arctic Metagaz)」で、今月初め、地中海のマルタ近海においてウクライナの水上ドローン攻撃を受けて甚大な損傷を負ったとされる。
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イタリア、スペイン、マルタ、ギリシャ、キプロスの5カ国は18日、地中海を漂流するロシア船籍の大型タンカーが環境破壊を引き起こす恐れがあるとして、EUの執行機関である欧州委員会に対し、緊急の対応を求める書簡を共同で送付した。このタンカーは乗組員なしで漂流しており、液化天然ガス(LNG)など危険性の高い貨物を積載しているため、海洋汚染や爆発の危険性が高いと警告されている。
漂流しているのはロシア船籍の大型タンカー「アークティック・メタガス(Arctic Metagaz)」で、今月初め、地中海のマルタ近海においてウクライナの水上ドローン攻撃を受けて甚大な損傷を負ったとされる。この攻撃で乗組員は全員救助されたものの、操船不能となり、その後無人のまま漂流している。タンカーはLNGに加え燃料油なども積んでおり、船体の損傷と貨物の性質を重ねて「重大な環境災害の差し迫った危険」を引き起こす可能性があるとして、5カ国の首脳は欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長宛てに書簡を送付した。
書簡の中で5カ国は、欧州全体で迅速に資源を動員できるよう、EUの「民間保護メカニズム」を発動することを要請している。これは加盟国が共同で資機材や専門要員を派遣できる枠組みで、船体の安定化や油漏れ防止策、海上での危険物処理に向けた支援が想定される。また、同書簡ではこのような船舶が国際基準を無視して航行することに対し、広範な海上安全保障と環境保護の観点からEUレベルでの協調した対応が必要だと強調された。
このタンカーはマルタとイタリア南部ランペドゥーサ島の間を移動し、直近の報道ではアフリカ北部・リビア沿岸に向かっているとみられている。マルタ当局は爆発の危険性を理由に、タンカー周辺7キロに安全区域を設定して近寄ること禁じた。
このタンカーはいわゆるロシアの「影の船団」に属すると見られている。これはロシアが制裁を回避する目的で運用する船舶群で、国際的な検査や保険未加入の古い船舶を含むとされ、欧州側から長年にわたって批判が出ている。影の船団を巡っては、EU内でも国際基準に従わない船舶の運航を制限すべきだという声が上がっており、今回の漂流事件がその懸念を一段と強めている。
欧州委員会は現在、この状況に関して対応策を検討しているとみられるが、加盟国間での法的・技術的な調整が必要で、即座の解決には課題が残る。5カ国は今週開催予定の欧州理事会でもこの問題を取り上げ、連携した対応策の具体化を図る考えを示している。
一方、環境保護団体や専門家は、地中海の生態系への影響の重大さを強調している。万が一事故が発生すれば、広範囲にわたる油膜や有害物質の拡散が懸念され、漁業や観光産業への打撃も免れない。このため、関係国による迅速な対応と、長期的な海洋保護の枠組みづくりが求められている。
今回の問題は、EU内での環境安全保障とロシアの制裁回避策への対処という二つの重要な課題が交差する事例となっており、これを機に加盟国間の協力強化と制度的対応の見直しが進む可能性がある。
