欧州諸国とイランの核協議難航「必要な措置講じていない」
イラン核合意の再開に向けた交渉には多くの問題点が存在している。
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欧州当局は17日、イランが核開発計画に関する国連制裁の復活を阻止するために必要な措置をまだ講じていないと警告した。
E3(フランス、ドイツ、イギリス)の代表およびEUのカラス(Kaja Kallas)外交安全保障上級代表はこの日、電話会談を行い、イラン核合意再開に向けた取り組みを再確認した。
E3は欧米側が求める核査察と外交交渉の再開にイランが応じない場合、制裁を再開する可能性があると警告している。
またE3はイラン核合意がほぼ機能不全に陥った現状を踏まえ、イラン側が要求に応じない場合、10月までに国連安全保障理事会で制裁の「即時発動」を促すとしている。
これは国連安保理の拒否権でも回避できないように設計されており、イランがE3の要求に応じなければ、10月にも発効する可能性がある。
カラス氏は17日の声明で、「イランの核問題に関する外交的解決の窓は、急速に閉まりつつある」と警告。「イランはフランス、イギリス、ドイツの要求に対処するための信頼できる措置を示す必要がある。つまり、国際原子力機関(IAEA)に全面的に協力し、すべての核施設を遅滞なく査察に開放することを意味する」と述べた。
ドイツ外務省もX(旧ツイッター)に声明を投稿。「イランは国連制裁の再発動を阻止するために必要な、合理的かつ正確な行動をまだ取っていない」と指摘した。
イランはこの警告についてコメントしていないが、E3から要請を受けたことは認めている。イランとIAEAの高官は先週、エジプト・カイロで会談し、イスラエルによる6月の核施設への攻撃で中断された査察の全面再開に向けた道筋を示した。
イラン核合意の再開に向けた交渉には多くの問題点が存在している。2015年に締結された包括的共同作業計画(JCPOA)は、イランが核開発を制限する代わりに国際社会が経済制裁を解除するという枠組みであった。しかし2018年に米国が一方的に離脱し、対イラン制裁を再開したことで合意は実質的に崩壊した。その後、イランはウラン濃縮活動を段階的に拡大し、合意の制限を超えた核開発を進めてきた。再開交渉の場では、この乖離をどのように修正するかが最大の課題となっている。
第一の問題は、制裁解除の範囲と保証である。イラン側は米国の離脱によって合意の信頼性が失われたと強調しており、再び合意しても次の政権が一方的に離脱しない保証を求めている。しかし米国の政治制度上、大統領が将来的に政策を転換する可能性を完全に排除することはできず、この不信感が交渉を難航させている。
第二に、イランの核開発の進展度合いが合意再開を複雑にしている。イランは高濃縮ウランを蓄積し、先進型遠心分離機の導入も進めており、合意当時の水準に戻すことは容易ではない。IAEAの査察体制も制限され、イランの核活動の透明性が低下していることが懸念材料となっている。
第三に、中東地域の安全保障環境も合意再開を阻む要素である。イスラエルやサウジアラビアなどの地域諸国はイランの核能力拡大や弾道ミサイル開発、さらにシリアやイエメンでの影響力行使に強い警戒感を示している。これらの国々は単なる核合意の復活では不十分と考えており、地域安全保障を包含した包括的な取り決めを求めているが、それは交渉の範囲を広げ、合意をさらに困難にしている。
第四に、国内政治も大きな障害となっている。イランでは保守強硬派が政権を握っており、対米交渉に慎重な姿勢を示す一方、米国でも議会や世論の反発が強く、大幅な譲歩は政治的に困難である。両国ともに内政上の制約が大きく、交渉で妥協する余地を狭めている。
イラン核合意の再開を阻む問題点は制裁解除の保証、核開発の現状と透明性の低下、地域安全保障の不安、国内政治の対立といった複合的な要因にある。これらが絡み合うことで交渉は膠着し、合意再建の道筋は依然として不透明なままである。