欧州評議会、セルビア当局の反政府デモ取り締まりに懸念表明

セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。
2025年7月4日/セルビア、首都ベオグラード、政府与党に抗議するデモを取り締まる警察(AP通信)

人権保護などを目的とする国際機関「欧州評議会」は4日、セルビア当局が政府与党に抗議するデモ隊に対し、過剰な武力を行使し、参加者を恣意的に拘束していると懸念を表明した。

欧州評議会の人権委員は声明で、「集会の自由と表現の自由は欧州人権条約に定められた基本的人権のひとつであり、セルビア政府はこれらを保障する義務がある」と述べた。

また委員は「政府は4月の訪問時にこの権利を保証すると約束したにもかかわらず、デモを抑制するために過剰な武力を行使している」と指摘した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも声明を出し、セルビア当局が違法な武力を行使していると非難した。

アムネスティは声明で、「セルビアの機動隊がベオグラードの街頭や大学前に集まった平和的なデモ参加者を標的にしている映像は懸念すべきものだ」と指摘した。

またアムネスティは「平和的な反対運動に対する過度の対応は正当化できない」と述べた。

セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。

この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。

ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。

このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。

この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。

ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求している。

野党はブチッチ政権が犯罪組織と連携して対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。

デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきたが、先月末に一部が暴徒化し、100人以上が逮捕される事態となった。

地元メディアによると、警察は3日早朝、ベオグラード市内でデモ参加者を摘発し、4人が病院に搬送され、うち1人が鎖骨を骨折していたという。

警察は人権団体の主張を否定し、許可なく道路を占領した場合は排除すると警告している。

デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。

これに対し、ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領はデモ隊を「テロリスト」と呼び、野党が国家転覆を企てていると主張している。

セルビアはEU加盟を目指す一方、中国やロシアとの関係を強化し、西側の対ロシア制裁にも参加していない。

政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。

検察は昨年末、駅崩落に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。

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