◎EUの対ロシア制裁は前例のないものだが、首脳らはエネルギーの流れを途絶えさせないよう慎重を期してきた。
EUの指導者たちは11日、ロシアの天然ガス、石油、石炭の輸入依存から「できるだけ早く」脱却することと、ウクライナ危機の影響で悪化したエネルギー価格の高騰に焦点を当てる経済対策を近く策定することに合意した。
各国の首脳は共同声明の中で、「化石燃料の依存度を下げるための取り組みを加速させ、石油と天然ガスの供給ルートを多角化し、再生可能エネルギーの開発を加速させる」と述べている。
また首脳らはEUの執行機関である欧州委員会に対し、5月末までに経済対策の草案を提出するよう要請した。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は今週、EUのロシア産ガス需要を年末までに3分の2に減らし、2027年までにロシアへのエネルギー依存を段階的に解消すると発表した。
またフォン・デア・ライエン委員長は、「タンカーによる液化天然ガス(LNG)輸送を増やせば、EUはロシアのガスの大部分を代替えできる」と強調した。
EUは発電、暖房、産業に使用される天然ガスの90%を輸入しており、ガス輸入の40%近く、石油の25%をロシアに依存している。
フォン・デア・ライエン委員長はEU圏内で生活する4億5000万人に省エネを推進する必要があると呼びかけた。
首脳らは共同声明の中で、月末にブリュッセルで開かれる次のEU首脳会議で欧州の購買力と企業の競争力をどう維持・支援するかについて議論し、方針を決める予定と述べた。
欧州はロシアの侵攻が始まる以前から、エネルギー価格の高騰とインフレに悩まされていた。
欧州委員会は先月、2022年のEU圏の経済成長率は昨年の5.3%から4%に、2023年には2.8%に減速すると予測した。
ウクライナ侵攻に伴うロシアへの制裁を強化した後、EU当局はこれらの数字が楽観的すぎると指摘し、5月に発表される次の経済予測で数字を引き下げると明らかにしている。
EU理事会議長を務めるフランスのマクロン大統領は、昨年承認された7,500億ユーロ(約96兆円)のコロナ復興予算に倣った「欧州共同投資」を推進している。
マクロン大統領は11日の会見で、「私たちは戦争の影響からEU圏を守る資金に関心を持っている」と述べ、欧州委員会に新たな予算枠組みを策定する必要があると促した。
コロナ予算の大半はまだ各国に分配されていないため、オランダのルッテ首相を含む一部の首脳は「新たな予算の捻出は時期尚早である」との見方を示した。
また、EUがエネルギー価格の高騰にどう対処すべきかについても意見が分かれている。
イタリアのドラギ首相は記者団に対し、「天然ガスの価格に上限を設ける可能性について議論した」と明らかにした。「欧州委員会は次のサミットまでに様々な意見の是非について報告することになると思います...」
ギリシャはエネルギー価格の高騰に対処する新たな独立機構の創設を含む6項目の計画を提案した。
欧州委員会は今週、エネルギー価格の高騰で影響を受けた企業に一時的な援助を提供する可能性について協議すると発表していた。また、一時的に価格に上限を設ける緊急措置も検討中と伝えられている。
ロシア中央銀行との取引禁止を含むEUの対ロシア制裁は前例のないものだが、首脳らはエネルギーの流れを途絶えさせないよう慎重を期してきた。
しかし、米国のロシア産エネルギーの輸入禁止を受け、EUでも直ちに同様の措置を取るよう求める声が高まっている。
フィンランドのマリン首相は記者団に対し、「非常に厳しい金融制裁を科す一方、EUはロシアの石油や天然ガスを購入し、ロシアに資金を提供している」と述べ、さらなる制裁が必要と指摘した。「私たちはできるだけ早く、ロシアの化石燃料を排除しなければなりません...」
EUの盟主ドイツはロシアの化石燃料に大きく依存している。一方、原子力発電を推進しているフランス(全発電の75%)は禁輸を発動しても影響は限定的と予想されている。