◎5月初めに公表された第6弾制裁の柱である「原油の段階的な禁輸」は供給不足を引き起こすという懸念から保留されたままである。
EUの首脳は30日、ロシア産原油の段階的禁輸を含む追加制裁協議で分裂した。
EU首脳会議は2日間予定されているが、欧州委員会のフォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は今回の協議で突破口が開けるとは到底思えないと警告した。「48時間以内に解決できるとは思ってません...」
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領はEU加盟27カ国に原油だけでなく天然ガス取引も停止するよう求めている。
EUは西側の対ロシア制裁を主導しており、プーチン(Vladimir Putin)大統領を含む政府高官、オリガルヒ、銀行、石炭部門などに制裁を科している。
しかし、5月初めに公表された第6弾制裁の柱である「原油の段階的な禁輸」は供給不足を引き起こすという懸念から保留されたままである。
EUは圏内で消費する天然ガスの約40%、石油の25%をロシアから輸入している。
ゼレンスキー氏は30日、オンラインでサミットに参加し、内部論争を終わらせるよう促した。「ロシアに代償を与えてください。制裁は効果的でなければなりません。そうして初めて、ロシアは平和を求めざるを得なくなります...」
ゼレンスキー氏はEUに「ステップアップ」するよう何度も促している。
しかし、ハンガリーのオルバン(Viktor Orban)首相は「合意は見えない」とゼレンスキー氏の懇願を一蹴した。ロシアの原油に大きく依存しているハンガリー、スロバキア、チェコ、ブルガリアは欧州委員会の提案に強く反対している。
チェコのフィアラ(Petr Fiala)首相は、原油制裁の延期が解決策になると示唆した。「ロシアのエネルギー依存から脱却する心づもりはできています。しかし、短期間では無理だ」
AP通信はEU高官のコメントを引用し、「首脳らは年末までに全体の輸入量の3分の2以上(海路で輸入される原油)を制裁対象に加えるよう調整している」と報じた。
オルバン氏はハンガリーの原油供給が保証されるのであれば、制裁を支持することができるとした。ハンガリーは国内で消費する原油の60%以上、天然ガスの85%を旧ソ連時代のパイプラインでロシアから輸入している。
海路の原油が制裁対象になった場合、燃料価格の高騰に悩まされているベルギー、ドイツ、オランダなどが新たな困難に直面すると予想されている。
ラトビアのカリンシュ(Krisjanis Karins)首相は首脳らに意見の相違を克服するよう促し、「加盟国は大切なことを忘れている」と指摘した。「ウクライナは命をかけています。ロシアが敗北して初めて、欧州は安心できるのです」
ドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相は楽観的だった。「私が聞くところによると、すべてが合意に達する可能性があり、遅かれ早かれそうなるように思われます」
第6弾制裁には個人の資産凍結と渡航禁止も含まれる。また、ロシア最大手スベルバンクは国際送金・決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除されるだろう。
ロシアの国営放送局3社はEU圏内でのコンテンツ配信を禁じられる。
今回の首脳会議ではウクライナに対する経済支援、軍事支援、戦争犯罪の調査にも焦点が当てられる。ロイター通信などによると、支援規模は恐らく90億ユーロになるとみられる。
31日は食料安全保障を中心に協議する予定。EUはウクライナ南部に滞留している穀物を安全に輸出する人道海上輸送路の確保を目指している。
ブリュッセルのEU本部前にはロシア産原油と天然ガスの禁輸を求めるデモ隊が集まり、首脳らに行動を促した。