◎電力各社の火力発電コストはロシアのウクライナ侵攻による原油・天然ガスの価格高騰により記録的な高値に達している。
EUの執行機関である欧州委員会とドイツの首脳は29日、ガス価格の高騰により上昇した電気料金を引き下げる改革を実行すると約束した。
欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長はスロベニアで開催されたフォーラムの中で、「電気料金の高騰は現在の電力市場設計の限界を示している」と述べた。
またフォンデアライエン氏は、この問題を解決するために、電力市場の構造改革に取り組んでいると明らかにした。
EUの電力システムは最も安価な電力を提供する発電所(発電会社)を最初に利用し、その価格は最後に利用される会社の価格を採用する「メリットオーダー(merit order)」と呼ばれるシステムで成り立っている。
メリットオーダーとは、追加の1kWhを発電するためにかかる費用、環境価値、系統安定コストを含めた社会的コストを低い順に並べたもののこと。
燃料費のかからない太陽光や風力といった再生可能エネルギーは原油や天然ガスなどの火力発電よりも安くなり、EUの電力システムはそれを採用する会社の電力を優先して顧客に届ける。
電力各社の火力発電コストはロシアのウクライナ侵攻による原油・天然ガスの価格高騰により記録的な高値に達している。
ドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相は29日、チェコのフィアラ(Petr Fiala)首相との共同記者会見で、「利用者の負担を軽減する必要がある」と指摘し、電力市場の改革に意欲を示した。
またショルツ氏は「電気料金を抑えつつ、圏内の電力供給を確保できるシステムを構築しなければならない」と呼びかけた。
ドイツ経産省の報道官はこの記者会見に先立ち、「メリットオーダーの原則は維持しつつ、その負の効果を取り除き、ガス価格の高騰が電気料金に反映されやすいシステムを見直す必要がある」と指摘した。
また報道官は再生可能エネルギーに言及し、「低価格で電力を供給できる会社は恩恵を受けるなどの措置を取り入れても良いかもしれない」と述べた。