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EU、ウクライナの主要パイプラインの修復費用負担へ、政治的対立深まる中


問題となっているのは、ロシア産原油を中欧へ輸送するドルジバ・パイプラインで、損傷による供給停止が政治的対立を激化させている。
ドイツ、ドルジバ・パイプラインと製油所(AP通信)

EUは17日、ウクライナ国内を通過する主要石油パイプラインの修復費用を負担する提案を行い、対立が続くウクライナとハンガリーの関係改善を図る動きを強めている。問題となっているのは、ロシア産原油を中欧へ輸送するドルジバ・パイプラインで、損傷による供給停止が政治的対立を激化させている。

このパイプラインは1月、ロシアによる攻撃で損傷し、ハンガリーやスロバキアへの原油供給が停止した。両国は内陸国で代替手段が限られており、特にハンガリーはロシア産石油への依存度が高い。そのため供給停止はエネルギー安全保障に直結する問題となっている。

これを受け、EUの執行機関である欧州委員会はウクライナに対し、修理のための資金と技術支援を提供する意向を示した。目的はパイプラインの早期復旧とともに、EU内で停滞している対ウクライナ支援の合意を前進させることにある。

背景にはハンガリーの強硬姿勢がある。同国のオルバン(Viktor Orbán)首相は原油供給が再開されない限り、約900億ユーロ規模のEU融資やロシアへの追加制裁に拒否権を行使すると表明している。「石油がなければ資金もない」とする発言はエネルギー問題を政治交渉の材料としていることを象徴している。

一方、ウクライナ側は供給停止が自国の意図ではなく、ロシアの攻撃による被害だと説明し、修復作業を進めていると強調している。実際、復旧には数週間から1カ月半程度を要する見通しで、作業の遅れは安全確保や追加攻撃のリスクとも関係しているとされる。

しかしハンガリーやスロバキアは、ウクライナが政治的理由で修理を遅らせていると疑念を示し、対立が深まっている。両国はすでにEUの対ロ制裁や資金支援の承認を阻止し、エネルギー供給問題がEU全体の外交・安全保障政策に影響を及ぼす事態となっている。

EU側は今回の資金提供によって膠着状態を打開し、加盟国間の結束を維持したい考えだ。ロシア産エネルギーへの依存を段階的に解消する方針を掲げる中でも、現実には一部加盟国が依存を続けており、エネルギー転換の難しさが浮き彫りとなっている。

今回の問題は単なるインフラ修復にとどまらず、戦時下のウクライナ支援、EU内部の政治的対立、そしてロシアとのエネルギー関係という複雑な要素が絡み合う構図を示している。パイプラインの復旧が実現するかどうかは、EUの結束と対ロ政策の行方を左右する重要な試金石となりそうだ。

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