◎エストニア議会は新大統領を決める議員投票で唯一の候補者であるアラル・カリス氏の就任に反対し、新大統領を選出できなかった。
8月30日、エストニア議会は新大統領を決める議員投票で唯一の候補者であるアラル・カリス氏の就任に反対し、新大統領を選出できなかった。
エストニア国立博物館の館長を務めるカリス氏は議会議員108人中63人から支持されたが、選出に必要な68票(3分の2以上)を集めることはできなかった。
エストニアの大統領の任期は5年で、1回再選可能。エストニア初の女性大統領であるケルスティ・カリユライド大統領の任期は10月10日に満了する。
大統領は主に外交、首相は内政を担当する。なお、現職のカーヤ・カラス首相も女性。エストニアは世界で唯一の女性が大統領と首相を同時に務める国になった。
議員投票で大統領が決まらなかった場合は、各地域を代表する208人の選挙人団による特別な投票に移行する。選挙人団投票は9月に行われる予定。
カリス氏は立候補に必要な議員の支持を集めた唯一の候補者だった。現職のカリユライド大統領は国民からは支持されているが、同僚や議会に対する痛烈な発言の影響で議員の支持を得ることはできなかった。
カリス氏は選挙当局が公式結果を発表した直後、記者団に「明日です」と語った。
中道右派の連立政権を束ねるカラス首相の改革党と中央党(108議席中59)は今月初めにカリス氏を承認したため、選出に必要な68議席を獲得することは確実と見込まれていた。しかし、カリス氏を支持した野党議員はわずか4人にとどまった。
エストニアの大統領選出プロセスは複雑であり、31日にさらに2回議員投票が行われる予定である。それでもカリス氏が68票を集められなかった場合は、9月の選挙人団投票に移行する。
選挙人団投票でも選出に必要な票(3分の2)を集められなかった場合、選出プロセスは議会に戻り、「2016年の大統領選」のように一からやり直すことになる。
改革党と中央党は、エストニアの主要な学術機関であるタルトゥ大学などを率いてきたカリス氏の職歴と、エストニア社会に対する理解を称賛した。
野党の社会民主党と祖国党はカリス氏を支持しているように思えた。一方、同じく野党のEKRE党は独自候補の擁立に失敗した後、カリス氏を支持しないと表明していた。
エストニアの首相は議会を率いる国のリーダーであり、大統領は国の顔として外交を主に担当する。しかし、大統領は軍の最高司令官であり、政府の任命権と議会で承認された法案を拒否できる権限を持っている。
<エストニアの基本情報>
・人口約120万人の先進国
・旧ソビエト連邦とは思えない民主的な国
・旧ソ連初のユーロ採用国