◎ロシアの支援を受ける分離主義者たちはロシア編入手続きを速やかに開始するよう求めている。
ウクライナ東部の分離主義国家であるドネツクとルガンスク人民共和国は20日、ロシア編入の是非を問う住民投票を実施すると発表した。
ロシア軍はこの数カ月停滞し、ウクライナ軍の反攻に押されている。
ロシアの支援を受ける分離主義者たちはロシア編入手続きを速やかに開始するよう求めている。
一部の専門家は両人民共和国がロシア領になれば、ロシアは「両州」に対する攻撃を「国家存亡の危機」とみなし、化学兵器や核兵器を使用する口実にする可能性があると警告している。
ロシアは同様の手法でクリミアを併合したが、国際社会はこれを認めていない。
ロシア国営メディアによると、プーチン(Vladimir Putin)大統領は20日夕方に国民向けの演説を行う予定だったが、延期されたという。
ウクライナのクレバ(Dmytro Kuleba)外相は20日、「見せかけの住民投票を行っても、何も変わらない」と述べ、反攻体制を維持すると誓った。
一方、ロシア国営テレビは専門家の話を引用し、「占領した領土を速やかに併合すれば、そこに対する攻撃は我が国に対する攻撃とみなすことができ、ウクライナのナチスに鉄槌を下すことができるだろう」と報じた。
ロシア国内ではウクライナ侵攻を成功させるために、「より多くの市民が徴兵されるのではないか」という噂が流れている。
連邦議会は動員や戦闘中の脱走、軍財産の損傷、不服従などの犯罪に対する処罰を強化する法案を可決している。
メドベージェフ(Dmitry Medvedev)前大統領は20日、ドネツクとルガンスクの住民投票は歴史を正し、不可逆的であるとテレグラムに投稿した。「住民投票による編入は我が国の憲法も指導者も連邦議会も覆すことはできません」
両人民共和国当局は9月23日~27日にかけて住民投票を行うと発表した。
その後、ウクライナ軍の反攻に直面している南部ヘルソン州のロシア当局も住民投票を実施すると発表し、南部ザポリージャ州もこれに続くとした。
ロシア国営メディアは「有権者は直接またはオンラインで投票できる」と報じている。
住民投票が公正に行われる可能性はゼロに等しく、当局は好きなように票を操作し、「住民の大多数が編入に賛成した」と主張するだろう。
ただし、ヘルソン州は今月、ウクライナ軍の反攻が激化したことで住民投票を延期している。ウクライナ軍が奪還した東部ハルキウ州からドネツク・ルハンシク両州への攻勢をさらに強めれば、住民投票どころではなくなるかもしれない。
ルハンシク州の大部分は7月に占領されたが、同州のガイダイ(Sergiy Gaiday)知事は19日、ウクライナ軍が郊外の村を奪還したと報告した。
ドネツク州の大部分はウクライナの管理下に置かれているものの、アゾフ海に面する一部地域をロシア軍に占領されている。
南部ヘルソン州は開戦直後に占領された。ウクライナ軍は同州奪還作戦を継続中とみられるが、戦線の状況はほとんど明らかなっていない。
ザポリージャ州の大半はウクライナの管理下に置かれている。同原発はロシア軍に占領された。
ドネツク人民共和国の首長は19日、ウクライナ軍の砲撃で少なくとも13人が死亡したと報告したが、ウクライナはこの発表に関するコメントを出していない。
ウクライナの領土を無理やり併合する試みは西側諸国とウクライナ政府を激怒させ、交渉による解決をさらに難しくするだろう。
ウクライナ国防省報道官は、住民投票計画を「ロシアがパニックを起こしている証拠」という見方を示した。
ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領も19日夜のビデオ演説で、「ロシア軍はパニックを起こしている」と述べていた。
ショルツ(Olaf Scholz)独首相は住民投票を「見せかけ」と一蹴し、マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領もこの計画を「パロディ」と嘲笑した。
NATOのストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は20日、「住民投票は違法であり、プーチンの戦争をエスカレートさせるものだ」と糾弾した。
一方、ロシアのシンクタンク「R.Politik」のスタノバヤ(Tatiana Stanovaya)氏はこの動きをウクライナと西側諸国に対する「最後通告」とみているようだ。
スタノバヤ氏は「もし適切な反応がなければ(ウクライナが住民投票の結果を無視すれば)、ロシアは軍隊をフル動員する」という見方を示している。「ロシアは自国の領土を保護するために、あらゆる兵器を使用するでしょう」