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デンマーク、外国人犯罪者の国外追放を可能とする法改正案を発表

EUは最近、難民申請の受け入れ条件の厳格化を含む移民政策全体の改革に乗り出しており、加盟国間で対応の強化が図られている。
2022年12月14日/デンマーク、首都コペンハーゲン、演説するフレデリクセン首相(Mads Claus Rasmussen/Ritzau Scanpix)

デンマーク政府は30日、重大な犯罪を犯した外国人の強制送還を可能とする法改正案を公表した。この法案では暴行や強姦など重大な犯罪で1年以上の懲役刑を受けた外国籍者について、デンマークからの追放を義務付ける内容が柱となっている。今後、議会での審議を経て成立すれば、送還対象者の拡大が進む見通しだとしている。

フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は首都コペンハーゲンの記者団に対し、法案について「重大な犯罪を犯した外国人は、社会の安全を守るために基本的にデンマークに居住すべきでない」と述べ、政府がこの問題に積極的に対応する意向を示した。一方で、欧州人権条約や欧州人権裁判所(ECHR)の解釈と衝突する可能性があることも認め、「国際的な人権基準との整合性をいかに保つか慎重に検討する必要がある」と強調した。

改正案は国外に合法的な居住資格を持たない外国人に対する取り締まり強化も含む。国外居住資格のない者に対しては電子足輪(アンクレット)による監視制度の導入や、不法残留者の強制捜査の強化、さらにはシリアにある在デンマーク大使館の再開やアフガニスタン当局との連携強化も盛り込まれている。これらは国外からの不法移民や治安上のリスクを減らし、送還手続きを円滑に進めることを目的としている。

フレデリクセン氏はこの5年でEU域外出身の外国人刑事犯315人が1年以上の懲役刑を受けているにもかかわらず、送還されなかったと指摘し、「この状況は多くの国民にとって理解しがたい」と述べた。また、重大な犯罪を犯した者の送還手続きが裁判所の判断や人権条約の解釈に委ねられている現行制度の問題点を改正で解消したいとの意図を示した。

この発表はEU全体が移民・難民政策の見直しを進めるなかで行われた。EUは最近、難民申請の受け入れ条件の厳格化を含む移民政策全体の改革に乗り出しており、加盟国間で対応の強化が図られている。デンマークの動きはこうした流れの一環とみられ、特に欧州内外で治安や移民問題に対する不満や懸念が高まっている事情を反映している。

ただし、人権団体や市民社会の一部からは、この法改正が外国人の基本的権利を侵害するおそれや、家族との関係を不当に断ち切るリスクがあるとの批判が出る可能性もある。反対派は「重大犯罪者の送還は必要でも、個々のケースを慎重に検討すべきだ」と主張しており、法改正をめぐる議論は今後も続く見込みだ。成立時期は未定であるが、議会内での審議やEUとの調整が焦点となる。

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