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デンマークのグリーンランド問題、独立志向の領土を守るジレンマ

この自治領の未来を巡り、デンマーク政府は矛盾した立場に立たされている。
2025年4月27日/デンマーク、首都コペンハーゲン、フレデリクセン首相(右)とグリーンランドのニールセン首相(AP通信)

デンマークは自治領グリーンランドをめぐる複雑な外交課題に直面している。長年にわたりデンマーク王国の一部として統治してきたグリーンランドは、1979年の自治導入以降徐々に独立志向を強め、独立権を明記した2009年の協定も存在する。しかし、この自治領の未来を巡り、デンマーク政府は矛盾した立場に立たされている。デンマークはNATOの同盟国である米国からの圧力に対抗しつつ、守ろうとする領土が実質的には「離れていく」過程にあるというジレンマを抱えている。

この問題の発端は、トランプ(Donald Trump)米大統領がグリーンランドの戦略的重要性を強調し、取得の意欲を表明したことだ。トランプ氏は同地域が北極における地政学的要衝であり、ロシアや中国の影響力拡大を防ぐ上で米国の安全保障上不可欠だと主張している。米国は購入や必要なら武力行使も含めたあらゆる選択肢があり得ると示唆し、グリーンランドの帰属をめぐり国際的緊張が高まっている。

トランプ氏の発言に対し、欧州諸国はデンマークを支持する姿勢を示している。欧州の同盟国は、他国の主権を侵害するような前例を許すことは国際秩序を揺るがす可能性があるとして、デンマークとグリーンランドの決定を尊重すべきだとの立場を取っている。また、デンマークのフレデリクセン(Mette Frederiksen)首相とグリーンランド自治政府のニールセン(Jens-Frederik Nielsen)首相は「国境と主権は国際法の根幹であり、他国を併合することはできない」と共同声明を発表した。

しかし、デンマーク政府にとっては頭の痛い問題が山積している。グリーンランドを維持し続けることは地政学的影響力を保つ上で重要だが、現地住民の多くが独立を望んでいる現実を無視できない。最大野党は米国と直接交渉したいと述べており、デンマークは自国の外交資源を費やしてまで関与を続ける価値があるのかという疑問にも直面している。ある政治評論家は「デンマークは本当に必要としていない者のためにどれだけ戦うべきか」と述べている。

経済的な負担も深刻だ。デンマークは年間約43億デンマーククローネ(約1057億円)の助成金をグリーンランドに提供し、治安、司法、防衛など基本的な機能も維持している。この財政支援に加えて、昨年は北極圏の防衛強化のため420億クローネ規模の防衛予算を発表したが、グリーンランド経済は停滞しており、持続的な自立には依然として大きなギャップが残っている。

歴史的・文化的な結びつきを重視する声もある。専門家は、デンマークとグリーンランドの関係を単なる経済・防衛の取引として捉えるべきではないと指摘し、長年にわたる家族的な絆や共有された歴史があることを強調している。しかし、それらの感情的側面が政治的現実をどこまで左右するかは不透明だ。

デンマーク政府は、今後予定されている米国務長官やグリーンランド自治政府との会談に全力を注ぐ構えだが、政治的立場のバランス調整は極めて難しい。国内では選挙も控えている中、政府は国際的信頼を維持しつつ、住民の独立志向や財政負担との調和を図る必要があり、対グリーンランド政策は今後も国際社会の関心を集め続けるだろう。

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