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ドイツ・ミュンヘンでサーフィンを巡る論争過熱、市が波発生装置を撤去

アイスバッハ川の立ち波は長年にわたりサーファーと観光客を引き付けてきた人気スポットであり、今回の波の消失とその復活を巡る対立は地域社会に波紋を広げている。
2025年12月26日/ドイツ、バイエルン州ミュンヘンのアイスバッハ川(AP通信)

ドイツ・ミュンヘンのサーフィンを楽しめる施設を巡る議論が過熱している。市内を流れるアイスバッハ川の名物であった立ち波(サーフィンが可能な波)は10月に市当局が川底の堆積物や砂利、流木などを除去した際に消失した。これを受けて、市とサーファーの間で波を復活させる方法を巡る協議が続いていたが、進展が遅いとして一部のサーファーが独自に行動を起こした。

クリスマス当日、正体不明のサーファーたちが川底に横木を設置し、波を再現。サーファーたちはウェットスーツ姿で数日間にわたり波乗りを楽しんだ。隣接する橋には「Just Watch. Merry Christmas!(見てください。メリークリスマス!)」という横断幕が掲げられていた。多くのサーファーや観光客が訪れ、かつての人気スポットの復活に歓声が上がった。

しかし、ミュンヘン市はこの行為を容認しなかった。12月28日未明、消防署の職員が出動し、川床の横木を撤去、波も消失した。市は安全性を理由に、正規の手続きを経ていない構造物を許可できないと強調している。市当局は声明で、横木は「違法かつ潜在的に危険」であると指摘し、アイスバッハの波については正式な解決策が必要だと述べた。

この問題は今年5月、33歳のサーファーが川の中でボードのリーシュ(足首と板をつなぐ紐)が川底の構造物に引っかかり、水中に押し込まれて身動きが取れなくなり死亡した事故を契機に安全性が大きくクローズアップされている。この事故を受け、市は無許可の人工的な構造物をこれ以上許容できないとの姿勢を示している。

一方、ミュンヘンのサーフィン団体IGSMは、市当局が波の復元に関して過度な条件を課しており、「プロジェクト」が停滞していると主張している。同団体はウェブサイトで、テスト期間中のリスクに対する市への補償や、橋に取り付ける機構に関する工学的証明書の提出など、当局が追加の要求を続けていると述べた。また、アイスバッハの波は初心者向けではなく、強い流れや水中のコンクリートブロックなどの危険があるため、経験豊富なサーファー向けであり、適切な安全装備が必須だと強調した。

アイスバッハ川の立ち波は長年にわたりサーファーと観光客を引き付けてきた人気スポットであり、今回の波の消失とその復活を巡る対立は地域社会に波紋を広げている。また、議論は単なるスポーツの問題にとどまらず、安全性と公共空間の利用、文化的価値の保全といった幅広いテーマを含むものとなっている。

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