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「性欲の死」テストステロンで元気を取り戻せる?

テストステロンは男女ともに性的興奮や性欲、気分、エネルギーに重要な役割を果たすホルモンとされる。
セックスレスのイメージ(Getty Images)

多くの人々が性欲の衰えを感じたり、パートナーとの性行為の頻度が減ったりする現象が「性欲の死」として密かに注目を集めている。この傾向は若者から中年、さらには閉経後の女性まで幅広くみられ、セックスや性的関心の低下を訴える声が増えている。科学者たちはこの背景に社会的・心理的要因が絡んでいる可能性を指摘する一方で、ホルモン、特に「テストステロン」の低下が関与しているのではないかという議論も盛んになっている。

テストステロンは男女ともに性的興奮や性欲、気分、エネルギーに重要な役割を果たすホルモンとされる。しかし、実際にテストステロン補充療法(TRT)が性欲低下に対してどこまで有効なのかについては専門家の間でも見解が分かれている。かつて舞台俳優として人気を博したアラン・リーブス(Alan Reeves)さんは30代以降に気分が落ち込み性欲が消失、パートナーとの関係にも深刻な影響が出たという。テストステロン療法を受けたことで性欲と生活の質が戻ったと語るが、治療を受けられる条件や効果の有無は一様ではない。

一方で、TRTに対しては懐疑的な声もある。多くのクリニックが「低い性欲=ホルモン異常」というメッセージで治療を勧め、広告が増えたことで過剰な期待や商業目的の普及につながっているとの批判がある。医療専門家の中には、性欲は複数の要因が絡む複雑な現象で、ホルモン補充だけで解決できるものではないと指摘する者もいる。例えば、関係性やストレス、生活習慣などが性欲に影響する可能性があり、単純にテストステロン値の調整だけで全てが改善するわけではないとの意見もある。

女性におけるTRTも議論の対象となっている。女性も加齢とともにテストステロンが低下し、これが性欲や気分に影響を与える可能性が指摘されているが、適切な投与量や安全性、効果の範囲についてはまだ研究途上で、限定的な効果しか報告されていないという見解もある。

また、テストステロンの補充には副作用のリスクも伴う。男性ではホルモン補充による体重増加や勃起の持続、精子数の低下といった影響が報告され、女性では体毛の増加や声が低くなるなどの変化が起こる場合があるとされる。これらの副作用や個人差を考慮すると、ホルモン療法は慎重に扱うべきだという意見が強い。

総じて、性欲衰退の原因は単一ではなく、心理的・社会的・生理学的な要素が複合的に影響しているとみられる。性的健康を改善するためには、ホルモンバランスの評価に加えて、心身の健康や人間関係の質を見直すことが重要で、TRTはその一部に過ぎない。ホルモン療法が適切なケースもあるものの、万能の解決策ではないという認識が専門家の間で共有されつつある。

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