チェコ・バビシュ元首相の支持率上昇、世論調査でリード拡大
ANOの支持率は8月から0.4ポイント上昇して32.6%、連立与党の支持率は0.4ポイント低下し21.1%となった。
.jpg)
チェコの野党ANOのバビシュ(Andrej Babis)元首相の支持率がさらに上昇し、来月の下院議会選(定数200)で政権を奪還する可能性が高まっている。
イプソスが29日に公表した世論調査によると、ANOの支持率は8月から0.4ポイント上昇して32.6%、連立与党の支持率は0.4ポイント低下し21.1%となった。
議会選は10月3~4日にかけて行われる。
ANOは数ヶ月間、税制改革や賃金引き上げ、支出支援の拡大、移民制限、EUの環境政策への反対を公約に掲げ、世論調査でリードを維持してきた。
IPSOSの世論調査は9月22日から28日にかけて、1467人の回答者を対象に実施された。
バビシュ氏は2017年から2021年まで首相を務めた。1954年、旧チェコスロバキアの首都ブラチスラヴァに生まれ、スロバキア系の出自を持つ。共産主義時代には国営企業で働き、国外でのビジネス経験も積んだ。その後、1990年代初頭の共産主義体制崩壊と市場経済への移行期に、自身の企業「アグロフェルト」を設立し、農業、食品、化学など多岐にわたる分野で事業を展開した。アグロフェルトは急成長し、バビシュ氏はチェコ国内で有数の富豪となった。
バビシュ氏は2011年に政党「ANO(不満を持つ市民の行動)」を設立し、反汚職、ビジネス的手腕による効率的な政治、既存政党への不信などを訴えて人気を集めた。彼の政治スタイルはポピュリズム色が強く、ビジネス成功者としてのイメージを前面に出して、政治に新風を吹き込む存在として登場した。2013年の下院選挙でANOは躍進し、バビシュ氏は財務大臣兼副首相として政権入りした。
2017年の選挙ではANOが第1党となり、バビシュ氏は首相に就任した。政権運営では経済成長の継続、失業率の低下、社会保障の拡充など一定の成果を挙げたものの、その一方で彼の政治手法や利益相反の問題が国内外で批判された。特に、自身の企業グループに対するEU補助金の不正受給疑惑や、共産主義時代に国家保安機関と関係していたとされる過去が争点となった。
また、メディアへの影響力も問題視された。バビシュ氏は複数の有力新聞社を所有しており、報道の中立性に疑問が呈された。これにより、民主主義の健全性を損なうとの懸念が広がった。さらに、反政府デモや市民運動が頻発し、批判の声が高まっていった。
2021年の総選挙では野党連合が勝利し、バビシュ氏率いるANOは政権を退くことになった。その後も政界に留まり、大統領選挙にも出馬したが、敗北を喫した。