◎同行の株価は15日、財務報告に弱点が見つかったというアナリストなどの指摘を受け、30%急落した。
資金繰りに苦しむ金融大手クレディ・スイス(CS)は15日、財政再建のためにスイス国立銀行(中銀)から最大500億フラン(540億ドル、7兆円)を借り入れると発表した。
同行は声明で、「よりシンプルな銀行になることを目指し、流動性を強化するために断固とした行動をとる」と述べている。
同行の株価は15日、財務報告に弱点が見つかったというアナリストなどの指摘を受け、30%急落した。
同行の急落により、欧州市場は売りが先行し、銀行株は軒並み下落。2008年のリーマン・ショックのような金融危機に発展するという不安が急速に高まった。
CSのケルナー(Ulrich Koerner)CEOは声明で、「同行は顧客のニーズを中心に据えた、よりシンプルで集中力のある銀行になるために、迅速に前進すると決意している」と述べた。
米国では先週、同国で16番目の規模を誇るシリコンバレー銀行が破綻し、その2日後には中堅のシグネチャー銀行も破綻するなど、銀行部門の問題が表面化した。
CSの株価急落後、筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンク(SNB)がこれ以上追加出資できないと表明。SNBの懸念は金融市場全体に広がり、主要な株式指数は軒並み急落した。
スイス金融市場監査局とスイス国立銀行(中銀)は15日の共同声明で、「CSはシステム上重要とされる銀行に課される資本と流動性の要件を満たしている」と強調。投資家の懸念に対処し、必要に応じて支援を提供するとした。
アナリストたちは「CSやシリコンバレーの問題がリーマン・ショックのような金融危機の始まりかどうかは、現時点では判断しかねる」と指摘している。
スイス金融市場監査局と中銀は声明の中で、「米国の銀行市場の混乱がCSに直接的な影響を与えるとは考えていない」と述べている。
ロイター通信などによると、イングランド銀行(英中銀)はCSおよびスイス当局と連絡を取り合い、この問題が欧州市場に影響を与える可能性を念頭に置いて監視しているという。
CSは1856年創業。近年、資金洗浄(マネーロンダリング)などのスキャンダルに相次いで直面している。2021年と2022年は赤字を計上、リーマン・ショック以来最悪の年となり、2024年まで黒字に転じる見込みはないと警告している。
同社の株価は15日以前から売りが先行し、その価値は昨年だけでおよそ3分の2に減少していた。
14日には財務管理における「重要な弱点」が指摘され、投資家の懸念はさらに高まった。
CSの筆頭株主であるサウジは「規制上の理由からこれ以上株式を買い増さない」と述べている。
CSは以前から財務状況に不安はないと主張していた。しかし、フランスとスペイン政府は今週、シリコンバレーの破綻後、他行がCSのエクスポージャーを減らそうと急いだことに懸念を示していた。