SHARE:

ハンガリー総選挙、どうなるオルバン政権、世論調査では野党優勢、4月12日投開票


オルバン氏はこれまで、ハンガリーを「非リベラル民主主義」と称し、司法やメディアの独立性を弱体化させ、欧州連合(EU)の価値観に挑む強硬な姿勢を鮮明にしてきた。
ハンガリーのオルバン首相(左)と野党TISZAのマジャル党首(Getty Images)

ハンガリーのオルバン(Viktor Orbán)首相が大きな政治的岐路に立たされている。4月12日に行われる総選挙でオルバン氏の与党フィデス・ハンガリー市民同盟が敗北する可能性が現実味を帯びてきたためだ。オルバン氏は2010年に首相に返り咲いて以降、4期連続で政権を維持してきたが、今回初めて政権交代の可能性と正面から向き合っている。

オルバン氏はこれまで、ハンガリーを「非リベラル民主主義」と称し、司法やメディアの独立性を弱体化させ、欧州連合(EU)の価値観に挑む強硬な姿勢を鮮明にしてきた。具体的には司法や報道機関に対する政府の影響力を強め、移民政策やLGBTQ+(性的少数者)の権利問題などで欧州主流派と衝突を繰り返してきた。さらに、ウクライナ支援やロシア制裁に対してEU内部で何度も拒否権を行使し、EU加盟国として異例の立場を取ってきた。

長期政権の中でオルバン氏は選挙制度そのものも就任以来何度も見直し、与党フィデスに有利となる選挙区割りや制度設計を行ってきたといわれている。このため「自由だが公平とは言い難い選挙」との評価もあり、選挙結果が実際の世論を反映しているかどうかが議論の的となっている。

こうした政治的基盤の強固さにもかかわらず、今回の選挙ではオルバン政権に対する有権者の拒否感や変化への期待が強まっている。中心的な対抗勢力として浮上しているのが、かつてオルバン氏の盟友であったマジャル(Péter Magyar)党首率いる最大野党TISZA(尊敬と自由)だ。マジャル氏はオルバン政権の腐敗や政策の硬直化を批判し、EU・NATOとの関係強化や汚職の撲滅、司法・メディアの独立回復を掲げて支持を拡大してきた。

複数の世論調査によると、マジャル氏のTISZAの支持率は与党フィデスを大きく上回っている。ある調査では、TISZAの支持率が56%、フィデスは37%と大差をつけている。だが、多数の有権者がまだ判断を保留していることから最終結果は予断を許さない状況だ。

世代間の対立も今回の選挙の重要な争点となっている。若年層の支持は圧倒的にTISZAに傾いている一方、高齢者層は依然としてオルバン支持が根強い。これは、経済や社会福祉などの政策に対する感受性の違い、また長年の政治的メッセージが浸透していることが背景にあるとみられる。

このような支持層の分裂はハンガリー国内だけでなく国際社会でも注目を集めている。オルバン氏は欧米の一部保守派やロシア、中国と友好的な関係を築き、国際的な保守・ナショナリスト勢力の象徴的存在と位置づけられてきた。米国ではトランプ(Donald Trump)大統領をはじめとする一部の保守政治家がオルバン氏への支持を表明、その政策は「強い国家」や「伝統的価値観の守護者」として評価されてきた。

一方、EUおよび西欧諸国では、オルバン政権が民主的チェック・アンド・バランスを弱めてきたことに対して批判が強く、EU資金の一部凍結や違法性の指摘など、厳しい対抗措置が取られてきた。その結果としてハンガリーとEU指導部の関係は緊張が続いている。

ただし、オルバン氏が敗北した場合でも、新政権がスムーズに発足できるかは不透明だとの指摘もある。16年間の政権運営でオルバン氏は主要な国家機関や法制度に強い影響力を及ぼし、仮にマジャル氏が勝利しても旧体制の根強い影響や制度的障壁に直面する可能性が高いという懸念も専門家の間で示されている。

また、オルバン氏は選挙戦の終盤にかけて恐怖を用いた政治的メッセージを強めているとの指摘もある。ウクライナやEUを敵視する姿勢を鮮明にすることで、「安定」や「安全」を求める有権者の不安に訴える戦略を展開している。

今回の総選挙は単なる政権交代の可能性を超え、同国の民主主義のあり方や方向性、そしてEUとの関係の行方を占う重要な一戦となっている。16年に及ぶオルバン時代が終焉を迎えるのか、それとも再び維持されるのか。その結末は欧州の政治地図にも影響を与えるだろう。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします