ブルガリア全土で反政府デモ続く、首相退陣も怒り収まらず
デモは先週から続く抗議運動の一環で、政府が2026年度予算案で増税や歳出拡大を盛り込んだことへの反発が発端となった。
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ブルガリアの首都ソフィアをはじめとする主要都市で18日、数万人規模の市民が街頭に繰り出し、汚職への抗議と公正な選挙の実現を求める大規模なデモが行われた。参加者たちは独立した司法制度の整備と政治腐敗の根絶を強く訴えた。
デモは先週から続く抗議運動の一環で、政府が2026年度予算案で増税や歳出拡大を盛り込んだことへの反発が発端となった。政府は当該案を撤回したものの、国民の不満は収まらず、最終的にジェリャズコフ (Rosen Zhelyazkov)首相が辞意を表明した。
参加者たちは政府の退陣や予算案撤回だけでなく、投票操作や買収、選挙結果の捏造といった不正行為が横行した過去の選挙を繰り返してはならないと強調している。 そのため、「公正で自由な選挙」への明確な保障と、不正の防止策を求める声が高まっている。
抗議運動の中心には汚職疑惑や政治的影響力を巡って米英両政府から制裁を受けている政治家・実業家ペエフスキ(Delyan Peevski)氏の存在がある。ペエフスキ氏が率いる政党は与党GERB(欧州発展のためのブルガリア市民)」と連立していたため、抗議の標的となっている。デモ隊はペエフスキ氏の影響力を強く批判し、政治改革を求めている。
ラデフ(Rumen Radev)大統領はジェリャズコフ政権の退陣を受けて暫定政府の設置を進める見込みで、総選挙の日程を調整中とみられる。 もし与党が新政権の合意形成に失敗すれば、大統領権限で暫定内閣を任命し、再び選挙を実施することになる。2021年以来8回目の早期選挙となる可能性がある。
ブルガリアは人口約640万人のEU加盟国で、2026年1月1日にユーロ圏に参加する予定。今回の政治的混乱はユーロ導入の直前という重要な時期に発生した。このため、経済統合に向けた準備や国際的な信頼維持にも影響が及ぶ懸念が強まっている。
今回の抗議運動には若者や学生の参加も目立ち、SNSなどを通じた情報発信や動員が活発に行われている。参加者の多くは「政治エリートが自己利益を優先し、公正な統治を軽視している」との認識を共有し、民主制度と法の支配の強化を求める。また汚職根絶と透明性ある政治を実現するためには、司法の独立性確保が不可欠であると主張している。
ブルガリア国内では政治的不信と制度への不満が根深く、過去数年にわたって政権交代が相次いできた。こうした状況下で市民が再び大規模な抗議行動に踏み切ったことは、同国の民主的プロセスと政治体制への疑問が強まっていることの表れだ。今後、ブルガリアがどのように政治的安定を取り戻し、汚職対策と選挙改革を実現するかが注目される。
