ブルガリア首相が辞意表明、抗議デモ激化、国民の不満高まる
政権は昨今の経済運営のまずさや汚職疑惑、政治決定におけるオリガルヒ(寡頭勢力)の影響が強いとの批判を受け、国民の不満が高まっていた。
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ブルガリアのジェリャズコフ (Rosen Zhelyazkov)首相が11日、辞意を表明した。
この発表は野党が提出した不信任決議案の採決が行われる直前に行われた。
ジェリャズコフ氏は首都ソフィアの記者団に対し、「本日の不信任投票を前に政府は辞職する」と語った。
政権は昨今の経済運営のまずさや汚職疑惑、政治決定におけるオリガルヒ(寡頭勢力)の影響が強いとの批判を受け、国民の不満が高まっていた。
野党主導の抗議デモは先週発表された2026年予算案を契機に拡大した。この予算案には税負担や社会保障負担の引き上げが含まれており、労働者層や若年層を中心に反発が広がった。
政府は批判を受けてこの予算案を撤回したが、抗議の矛先は政策全般や政治腐敗に向かった。デモ参加者は「辞任せよ」「マフィアは出て行け」などとシュプレヒコールを上げ、ソフィアだけで10万人を超す大規模な集会となった。各地の大学生や若年層の参加も目立ち、国内複数都市でも抗議が続いた。
特に批判が集中したのは、影響力の強い政治家で実業家のペエフスキ(Delyan Peevski)氏の存在である。ペエフスキ氏は米国およびイギリスから汚職を理由に制裁を受けており、その勢力が政府政策に大きな影響を与えていると野党は主張してきた。連立政権に参加する政党とペエフスキ氏の関係も汚職との闘いに逆行しているとの批判が高まっていた。
この辞意表明は不信任決議案の採決の直前に行われた。与党はこれまでに複数回不信任決議を乗り切ってきたが、今回の抗議の規模と勢いの前に政権維持の目算が立たなくなったとみられる。
辞職は正式には議会への提出を経て受理される。今後の国政は不透明な情勢となっている。
今後、ラデフ(Rumen Radev)大統領は与党「GERB(欧州発展のためのブルガリア市民)」に新政権樹立の機会を与えるが、党内対立や議席分散のため安定した内閣形成は容易ではないと予想されている。
議会が新政権を構築できない場合、暫定政府が設置され総選挙が実施される可能性が高い。過去数年、ブルガリアでは政治的混迷が続き、2021年以降すでに7回総選挙が行われている。
ブルガリアは2007年にEUに加盟し、ユーロ圏への加入に向けて必要な経済基準を満たしているが、この政治的な混乱は加盟のタイミングや経済政策運営に影響を与える可能性がある。ユーロ圏加入(2026年1月1日)は国民生活や対外投資にとって重要な転換点となるが、国内の政治的な不信感が高まる中、国民の支持や期待は分かれているとの見方もある。
