古代ローマの「ピザ」を再現 ハンガリーのレストラン
このピザは現代の一般的なピザに欠かせないトマトやモッツァレラチーズを一切使わず、紀元前のローマ帝国時代に存在したとされる材料だけで再現したものである。
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ハンガリーの首都ブダペストで古代ローマ風のピザを提供するユニークな試みが話題となっている。このピザは現代の一般的なピザに欠かせないトマトやモッツァレラチーズを一切使わず、紀元前のローマ帝国時代に存在したとされる材料だけで再現したものである。提供しているのは市中心部にある「ネバーランド・ピッツェリア」で、創業者のジョセップ・ザラ(Josep Zara)さんと料理長ゲレグリ・バールドッシー(Gergely Bárdossy)さんが共同で開発した限定メニューだ。
ザラさんは企画の背景について、「好奇心から、古代ローマ時代にはどのような“ピザ”があり得たのかを考え始めた」と説明している。実際には当時、トマトはアメリカ大陸からの伝来後でなければヨーロッパに存在せず、モッツァレラもまだ発明されていなかった。現在知られているナポリ風ピザが誕生したのは18世紀ごろとされている。古代ローマ人はハーブやチーズ、ソースを載せた焼きパンのようなものを食べていた記録はあるが、現代のピザとは大きく異なる。
ピザ開発のヒントとなったのは2023年にイタリア・ポンペイで発見されたフレスコ画だ。この壁画にはナッツや果実、スパイス、ペスト状のソースを載せた焦げ目のある平たいパンのような料理が描かれており、ザラさんはこのイメージに強い興味を抱いたという。そこで古代史の専門家に相談し、5世紀ごろの古代ローマ料理書を参考に、当時使われていた食材のリストを作成した。
この制約の中で最大の挑戦となったのは生地の発酵方法だった。現代では生地の大部分を水分で膨らませるが、古代ローマ時代には上下水道のようなインフラはなく、水を大量に使うことが困難であった。ピッツェリアのスタッフは試行錯誤の末、ほうれん草を発酵させたジュースを天然の酵母の代わりに使用する方法を見出した。また、原材料は小麦の原種であるエインコーンやスペルトなど、当時一般的に栽培されていた穀物がベースとなっている。
ピザのトッピングには、古代ローマ時代の上流階級の食文化を彷彿とさせる素材が用いられている。オリーブペースト(エピトゥルム)、発酵魚醤(ガルム)、コンフィにした鴨の脚、トーストした松の実、リコッタチーズ、そしてブドウを煮詰めたソースなどだ。これらは当時の料理に頻繁に登場した組み合わせで、現代の味覚と対比させながらも歴史を感じさせるものになっている。
バールドッシーさんはこの料理について、「私たちの創作は現代のピザとして理解できるよう工夫したものだ」と述べる一方、「すべての素材を日常の一皿として使うわけではない」として、一般的なピザほど広く受け入れられるわけではないとの認識を示している。実際、通常のピザを好む客の方が多く、このローマ風ピザは一部の冒険心ある客層向けの限定メニューであるという。
ザラさんは今回のプロジェクトが、「伝統と創造性を融合させるというネバーランド・ピッツェリアの哲学を体現している」と語っている。彼はまた、実験的なピザを数多く提供しているが、一つだけ明確な線を引いていることとして、「パイナップルだけは絶対に使わない」と冗談交じりに述べ、遊び心のある姿勢も見せている。
