◎ベラルーシの独裁者、リトル・プーチンことアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は23日、ギリシャ発リトアニア行きの民間航空機を自国の空港に強制着陸させ、搭乗していたプロタセビッチ氏とガールフレンドのソフィア・サペガ氏を逮捕した。
2019年11月17日/ベラルーシ、首都ミンスク、ジャーナリストのラマン・プロタセビッチ氏(Euroradio/AP通信)

5月25日、ベラルーシ政府の国家テロで逮捕されたジャーナリストのラマン・プロタセビッチ氏の母親が国際社会に支援を求めた。

ベラルーシの独裁者、リトル・プーチンことアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は23日、ギリシャ発リトアニア行きの民間航空機を自国の空港に強制着陸させ、搭乗していたプロタセビッチ氏とガールフレンドのソフィア・サペガ氏を逮捕した。

プロタセビッチ氏はテレグラムメッセージングアプリのNextaメディアネットワークの共同創設者で、反ルカシェンコ派の活動を組織化するうえで重要な役割を果たしてきた。

ベラルーシの州メディアは24日午後にプロタセビッチ氏の自白動画を公開した。

ベラルーシの治安当局KGBは昨年11月、プロタセビッチ氏をテロへの関与が疑われるとして犯罪者リストに加えた。ベラルーシはヨーロッパで唯一死刑制度を維持しており、テロに関与した者は死刑に処される。

プロタセビッチ氏の母親、ナタリア・プロタセビッチ氏はABCニュースのインタビューの中で、「息子を救ってください」と訴えた。「息子は殺されます。彼らは息子を処刑するでしょう...」

ナタリア氏はプロタセビッチ氏の自白動画について、「打撲傷を隠すために化粧が施されていた」と主張した。「私は息子の顔を誰よりも知っています。目の周りのアザ、殴られたような傷跡、鼻は明らかに曲がっていました。政府は暴力は振るっていないと言いますが、あり得ません。彼らは間違いなく嘘をついています」

ソビエト時代に培った鉄拳で自国民をねじ伏せてきたルカシェンコ大統領は、ベラルーシの領空内に入った英ライアンエアーのFR4978便を強制着陸させるためにMiG-29戦闘機に出撃を命じ、国際社会の爆発的な非難に直面した。

25日のEUサミットに出席した各国首脳はベラルーシに対する制裁を強化し、プロタセビッチ氏とサペガ氏の釈放を要求した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は記者団に対し、「容認できない」と述べた。

国連人権高等弁務官事務所のルパート・コルビル報道官はベラルーシが公開した自白動画について、「プロタセビッチ氏の顔には打撲傷があった」と主張した。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は可及的速やかに釈放を要求すると誓約した。「EUは利用可能な手札を全て使います...」

2021年5月25日/ブリュッセルで開催されたEUサミット、左からアンゲラ・メルケル首相、エマニュエル・マクロン大統領、マルタのロベルト・アベラ首相(John Thys/Pool/AP通信)

ワルシャワに本拠を置くNextaメディアネットワークは、昨年8月から本格化した抗議活動の支援や、暴力的な取り締まりを行う治安部隊を避ける情報などを抗議者や関係者に発信してきた。

プロタセビッチ氏は関係者とNextaを設立した時はまだ10代だったが、影響力は次第に大きくなり、ルカシェンコ政権の汚職疑惑に関する情報は世界のメディアも注目していた。Nextaとその姉妹チャンネルであるNextaLiveのチャンネル登録者数は5月時点で200万人を超えている。

プロタセビッチ氏は2020年にNextaを去り、新たなテレグラムチャンネルを設立した。

ベラルーシ当局は、プロタセビッチ氏をテロ監視リストに追加したうえで、憎悪と暴力を扇動した罪と、過激派を組織した罪で起訴しようとしている。扇動罪は最大12年、犯罪集団の組織は最大15年の実刑を科される可能性がある。

昨年の不正大統領選挙に伴う爆発的な抗議活動をどうにかやり過ごしたルカシェンコ大統領は、数週間ほど前から多くの独立系ジャーナリストを弾圧し始めていた。ベラルーシ西部の裁判所は先週、ルカシェンコ大統領を批判した数人の活動家に長期刑を言い渡した。

EUの首脳たち24日、ベラルーシの航空会社に対し、EUの空域への進入と空港の使用を禁じ、当局者に制裁を科すことに合意した。マクロン大統領は、「フライトの制限はベラルーシの経済に深刻な影響を与えるだろう」と述べた。

さらに、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「EUはベラルーシに資金を提供している企業や経済団体を対象とした制裁措置を導入する」と発表した。

ミンスクを拠点とする独立した政治アナリスト、アレクサンドル・クラスコウスキーはAP通信の取材に対し、「厳しい制裁は状況を悪化させる可能性がある」と警告した。「ベラルーシは経済的に困窮し、最大スポンサー兼同盟国のロシアに助けを求めます。クレムリンはベラルーシに様々な要求を突き付け、影響力をさらに強めるでしょう。西側諸国とNATOは最悪の事態を想定して行動しなければなりません」

西側の猛反発にもかからず、ルカシェンコ大統領は弾圧を継続している。野党キリスト教民主党の指導者、パバル・サイビアリニエック氏は25日、大規模な抗議活動を扇動した罪で懲役7年の実刑判決を受けた。

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