抗議活動は6週目に突入
9月13日、ベラルーシの首都ミンスクに集まった10万人以上の抗議者たちは、権威主義的な大統領への辞職を呼びかけ、大通りを行進した。
毎週日曜日にピークを迎えるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領への抗議活動は6週目に突入しても一向に止まず、むしろ勢いを増しているように見える。
人権グループViasnaによると、13日の抗議活動には約15万人が集まり、過去最高に迫る勢いだったという。ルカシェンコ大統領は14日にウラジミール・プーチン大統領との首脳会談を予定しており、ロシアの動向に警戒感を示す人々が多く集まったものと思われる。
この日、多くの抗議者たちがロシアの介入に反対するプラカードを掲げ、行進を行った。
8月9日の大統領選挙の不正を受けて始まったベラルーシ騒乱は6週目に突入した。抗議者たちは、ルカシェンコ大統領が有効票の80%を獲得したという不正選挙委員会の発表に猛抗議しており、開票所の一部は不正があったことを認めている。
プーチン大統領は、抗議活動が暴力的になり、ルカシェンコ大統領が力ずくで排除された場合、ロシアの治安部隊をベラルーシに派遣する用意があると述べ、野党勢力、抗議者、そして不正選挙に異議を唱えるNATOおよびEUに強烈な圧力をかけた。
プーチン大統領の脅迫を無視すれば、2014年のクリミア危機と同じ事態につながる可能性も否定できず、その口実を与えてはならないという懸念が強まっている。
なお、ルカシェンコ大統領は、ベラルーシがロシアに飲み込まれることを望んでいないと繰り返し表明している。しかし、政治的、経済的、そして軍事的なつながりは強めたいと考えており、今回の騒乱でもプーチン大統領のバックアップに期待していることは確かである。
一部の観測筋によると、クレムリンはルカシェンコ政権の解散を望んでおり、追いつめられたルカシェンコ大統領に平和的な撤退を求めるよう脅迫する可能性があるという。
独立政治アナリストのヴァレリー・カルバレビッチ氏はAP通信の取材に対し、「ルカシェンコ大統領はクレムリンの介入を示唆したが、抗議活動の火は消えなかった。結果、クレムリンは統率力のないルカシェンコ大統領を見限り、新たな指導者を探すことになる、かもしれない」と語った。
「ヨーロッパ最後の独裁所」と呼ばれるルカシェンコ大統領は、1994年から鉄の拳でベラルーシ国民約950万人を支配し、野党とメディアを厳しく取り締まってきた。
しかし、大統領選挙後に始まった今回の抗議活動、そして抗議者たちの決意は、連日治安部隊および警察による暴力と虐待が行われているにも関わず、一向に収まらない。
抗議活動は6週目に突入
ルカシェンコ大統領への圧力
13日の抗議活動には、これまでと同じく多数の武装した警察官が各地に配置され、主要エリアをブロックした。
この日、警察当局は抗議の前と最中に約400人を逮捕したと発表した。
独裁政権を26年間維持してきた66歳のルカシェンコ大統領は、選挙での不正を完全否定し、これからもベラルーシの平和を守り続けると宣言した。
現在、大統領選挙に関わった野党党首は逮捕もしくは隣国に亡命している。
首都ミンスクに殺到した10万人超の抗議者たちは、ルカシェンコ大統領および政府高官たちの辞職を求め、ドロズディの住宅街周辺を行進した。
しかし、目の前に立ちふさがった警察官の暴力に屈し、またしても逮捕者が出た。
内務省は首都ミンスクだけで約400人を拘束、ブレストを含む16都市でも抗議活動が行われたと述べ、数千人規模の群衆に大砲や重火器を突きつけたと報告した。
ミンスクでの抗議に参加した女性は、プラカードをかざしながらクレムリンの介入に抗議したと述べた。
抗議に参加した女性:
「ベラルーシの権力の源は国民であり、ルカシェンコやクレムリンではない」
「ルカシェンコは友達のプーチン大統領に助けを求めた。しかし、私たちはそれを求めていない。プーチン大統領もクレムリンも必要ない。ロシアの介入を許せば、与野党党首の会談など絶対に行われない」
警察は大統領官邸周辺に有刺鉄線を張り巡らしたうえで、囚人輸送車両をセットアップ。抗議者たちの波を押し返すべく、KGBの思想を受け継ぐ屈強な男たちがフル武装し、敵を迎え撃った。
現在、ルカシェンコ大統領は譲歩や調停といった話し合いによる解決を一切拒否し、「西側の隣人たちは、ベラルーシの滅亡を企てている」と主張している。
以来、ルカシェンコ大統領は、「西側の圧力には決して屈しない」というパフォーマンスを行うようになった。先日は大統領官邸敷地内で自動小銃をブンブン振り回し、NATO、EU、そして選挙の不正を厳しく指摘したアメリカに向け、威嚇射撃を行った。
13日の抗議活動は先週までのそれとほぼ同じだった。
一部のKGBは抗議者を暴力的に排除したが、大半は平和的に行進する者たちを見守り、攻撃的な動きを見せない限り、過激な弾圧は行われなかった。
多くの抗議者たちは、「ベラルーシのガチョウ」と呼ばれるポーズをとっていた。これは首の蝶ネクタイを巻き、羽織った国旗を羽に見立てるものである。
家族連れの姿も目立ち、ルカシェンコ大統領への撤退を求める声は大きかったが、暴動に発展する兆しはほとんどなく、抗議は平和的に進んだ。
一方、抗議の列から離れた者たちは、KGBの標的にされることが多かった。
列から離れてしまった者たちは、男女を問わずKGBの激しいタックルを受け転倒。その後、フル武装した屈強な男たちは、ノックアウトした抗議者たちを囚人輸送車両に詰め込み、走り去った。
国民の怒りを買った大統領選挙から約1カ月。これまでに数千人の抗議者が逮捕され、警察による拷問と虐待は世界中から猛批判を受けている。
ルカシェンコ大統領は、友人のプーチン大統領との信頼関係を盤石にしたいと考えており、14日の首脳会談に注目が集まっている。
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