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ベラルーシが政治犯52人を解放、リトアニア大統領が発表

ベラルーシの人権状況は欧州の中でも特に厳しい制約が存在することで知られている。
2024年3月8日/リトアニアの在ベラルーシ大使館近く、夫の解放を求めるチハノフスカヤ氏(AP通信)

ベラルーシが52人の政治犯を解放した。リトアニアのナウセーダ(Gitanas Nausėda)大統領が11日、明らかにした。

それによると、52人は全員リトアニアに入国したという。

52人のうち14人は外国人。内訳はリトアニア人6人、ラトビア人2人、ポーランド人2人、ドイツ人2人、フランス人1人、イギリス人1人である。

ナウセーダ氏はX(旧ツイッター)に声明を投稿。「政治犯解放に向けた継続的な努力に対し、米国およびトランプ(Donald Trump)大統領に深く感謝する。52人が解放された。しかし、ベラルーシの刑務所には依然として1000人以上の政治犯が収監されており、彼らが自由を得るまで私たちは立ち止まらない」と書いた。

6月にはトランプ政権の高官がベラルーシを訪問した後、リトアニアに亡命中の野党指導者チハノフスカヤ(Svetlana Tikhanovskaya)氏の夫であるチハノフスキー(Siarhei Tsikhanouski)氏ら13人が解放された。

ベラルーシの人権団体「ビアスナ人権センター」によると、同国で収監されている政治犯は約1200人。その中には22年にノーベル平和賞を受賞した人権活動家ビアリアツキー(Ales Bialiatski)氏や野党指導者のコレスニコワ(Maria Kolesnikova)氏などが含まれている。

その多くが2020年の大統領選後の抗議デモに参加した人々である。

ベラルーシの人権状況は欧州の中でも特に厳しい制約が存在することで知られている。1994年から権力を握るルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は強権的な統治を続け、政治的自由や市民的権利を著しく制限してきた。

言論の自由、報道の自由、集会や結社の自由は大きく制限されており、政府に批判的な活動家やジャーナリストは頻繁に拘束や脅迫の対象となっている。国際的には「ヨーロッパ最後の独裁国家」と呼ばれることもあり、その閉鎖的な統治体制が人権侵害の温床となっている。

特に問題が顕著になったのは2020年の大統領選挙である。選挙は不正が横行したと広く指摘され、ルカシェンコ氏の圧倒的勝利が発表された後、国内各地で大規模な抗議デモが勃発した。これに対して治安部隊は暴力的な弾圧を行い、数千人の市民が逮捕・拘束された。

拘置施設では拷問や虐待が報告され、人権団体や国際機関は深刻な懸念を表明した。その後も野党指導者や独立系ジャーナリストは国外追放や長期刑を科され、国内の反対勢力はほぼ壊滅状態に追い込まれている。

報道環境も極めて厳しく、国家が支配するメディアが情報を独占する一方で、独立系メディアは閉鎖やインターネット遮断に直面している。2021年には旅客機を強制着陸させ、政権批判のジャーナリストを拘束するという事件も起き、国際社会から強い非難を浴びた。さらに、インターネット規制や監視の強化により、市民が自由に情報を得たり発信したりする権利は著しく制限されている。

加えて、市民社会組織やNGOに対する締め付けも強い。多くの人権団体は「過激主義」や「外国の影響」を理由に活動を禁止され、活動家は逮捕や国外逃亡を余儀なくされている。労働組合の自由も制約され、政権に批判的な労働者は解雇や報復の対象となる。こうした状況は、国際労働機関(ILO)や国連人権理事会でも繰り返し問題視されている。

ベラルーシの人権状況は民主主義の基本原則から大きく逸脱しており、国際社会との摩擦を深める要因となっている。欧米諸国は制裁措置を強化して圧力をかけているが、政権はロシアとの関係を強化することで体制の維持を図っており、人権改善の見通しは依然として厳しい。

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