ベラルーシ外務省、チェコの外交官を国外追放、報復措置
チェコ政府は9月8日、ベラルーシの情報機関が指揮する欧州スパイネットワークを摘発したと発表後、ベラルーシの外交官を追放していた。
とベラルーシのルカシェンコ大統領(Getty-Images).jpg)
ベラルーシ外務省は19日、EU諸国との関係悪化を受け、報復措置として在チェコ大使館の外交官を追放したと発表した。
同省は声明で、今回の措置を「チェコ当局によるベラルーシへの偏見の報復」と呼んだ。
チェコ政府は9月8日、ベラルーシの情報機関が指揮する欧州スパイネットワークを摘発したと発表後、ベラルーシの外交官を追放していた。
チェコの情報機関BISは当時の声明で、欧州諸国の捜査チームがベラルーシ国家保安委員会(KGB)のスパイを発見したと明らかにしていた。
その後間もなく、ポーランドがベラルーシ人スパイを逮捕したと発表。「ポーランドに対するベラルーシ国家の攻撃的行動を支援した」としてベラルーシの外交官を追放すると表明した。
ベラルーシ外務省は声明の中でポーランドにも言及。「ポーランドの外交使節団を召喚し両国の関係と現状に関する実質的な協議を行った」と明らかにした。
2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻を開始して以降、ベラルーシは戦争の重要な後方拠点として位置づけられることになった。ルカシェンコ政権は開戦前からロシア軍の駐留を認めており、侵攻開始時にはベラルーシ領からもロシア軍がウクライナ北部に進攻した。以後もロシア軍の兵站や訓練の拠点として活用され、軍事同盟国としての結びつきが一層強まった。これにより、ベラルーシは実質的に侵攻を支援する「共犯」とみなされ、EU諸国との関係は急速に悪化した。
EUは2020年の大統領選挙での不正疑惑や反政府デモ弾圧以来、ルカシェンコ政権に対して制裁を科していたが、侵攻支援を受けて制裁を一段と強化した。金融制裁や貿易規制に加え、石油製品や肥料などベラルーシの主要輸出品にも厳しい制限が課された。航空便の乗り入れ禁止や資産凍結、関係者への渡航禁止も実施され、ベラルーシは国際的孤立を深めた。
一方でベラルーシ国内でも不安が広がった。国民の多くは戦争参加に消極的であり、EUとの関係悪化による経済停滞や物価高騰への不満が高まっている。ルカシェンコ政権はロシアへの依存を強めざるを得ない状況に追い込まれ、エネルギーや安全保障面でモスクワの影響力を一層受け入れている。
EU諸国にとってベラルーシは、ロシアの侵攻戦略と不可分の存在であり、ウクライナ国境やポーランド、リトアニアなどのNATO加盟国との間で安全保障上の不安定要因となっている。さらに2021年から続く「移民流入の武器化」、すなわち中東やアフリカの移民をEU国境に送り込む戦術も並行して行われ、緊張は続いている。
2022年以降のベラルーシとEUの関係は対立と相互不信が決定的に強まったものと言える。EUはベラルーシをロシアと一体の「侵略側」と位置づけ、制裁と封じ込めを強化する一方、ルカシェンコ政権はロシアに依存することで生き延びようとする。両者の溝は深まり、短期的に修復の見込みはほとんどないのが現状である。