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欧州住宅危機、アパートの寝室単位で販売する業者も

欧州の住宅危機は今後も若年層の生活や経済活動に影響を与え続ける可能性が高く、伝統的な所有モデルと新たな取得戦略との共存が求められている。
2025年3月31日/スペイン、バルセロナの住宅地(ロイター通信)

欧州の住宅危機が深刻化し、伝統的な住宅購入手段では手が届かない若年層が極めて異例の方法に頼る状況が広がっている。スペインではスタートアップ企業が共有アパートの「寝室」単位で販売し、イギリスでは友人同士で共同購入するための特別な住宅ローン支援策が登場するなど、従来の不動産市場の枠組みを超えた取引が増加している。こうした動きは住宅価格の上昇が所得を大きく上回る欧州全域の問題を象徴している。

スペインを拠点とするスタートアップ「Habitacion.com」は個々の「寝室」を最大約8万ユーロで販売しており、販売物件は首都マドリードやバルセロナなど複数都市で紹介されている。同社によると、2025年には約200の寝室が売却され、3万2000人以上が購入希望リストに登録しているという。これは通常の1ベッドルームの物件価格の3分の1程度の価格で、特に初めて購入を試みる若者にとっての「入り口」として機能している。

Habitacion.comの創業者オリオル・バルス(Oriol Valls)氏は伝統的な住宅市場の圧力について指摘し、若年層の家族形成やライフスタイルの変化もこうした動きを後押ししていると説明する。スペインでは過去10年で平均賃金が26%上昇する一方で、住宅価格は81%上昇し、若者が単独で住宅取得を目指すことが困難な状況にある。

イギリスでは不動産開発業者が「Buddy Up(バディアップ)」と呼ばれる制度を導入し、友人同士で共同購入する際の法律手続き費用の一部を補助するなどの支援を行っている。これは単独での購入資金が不足する若者らを支援することを目的としている。さらに、イギリスやフランス、ドイツ、イタリアなど複数の国の銀行が、2008年の金融危機以降消滅していた低頭金または頭金ゼロの住宅ローンを復活させ始めている。ただし、これらのローンは高い金利や厳しい審査基準が設定されており、一般的な若年層にとって手軽な選択肢とは言い難い面もある。

賃貸物件への投資という形で住宅市場への関与を図る動きも見られる。スペインやアイルランドではPropHero(プロップヒーロー)のようなプラットフォームが、小口投資家でも賃貸住宅建物の所有権の一部を購入できる仕組みを提供している。例えば2万ユーロ程度から投資できるこうした「持分所有」の方法は、購入や賃貸のコストを相殺する収入源として一部の若者に選ばれている。

不動産コンサルタントの分析では、これら新たな住宅取得・所有モデルは単なる流行ではなく、若年層が伝統的な購入方法で住宅を手に入れることがほぼ不可能になっている現実を反映していると指摘される。住宅価格が所得を大幅に上回る状況は欧州全体に広がっており、若者が複雑かつコストの高い方法で市場に参入せざるを得ない状況は、住宅危機が単なる経済指標上の問題ではなく、社会構造そのものに影響を与えている事実を如実に示している。

EUの執行機関である欧州委員会は2025年12月に住宅の手頃な価格確保に向けた計画を発表したものの、具体的な効果は今のところ見えていない。こうした政策が実際に有効性を発揮するには、供給拡大や金融条件の改善など、多面的な対策が必要とされるが、短期的な解決策は依然として見いだされていない状況だ。

欧州の住宅危機は今後も若年層の生活や経済活動に影響を与え続ける可能性が高く、伝統的な所有モデルと新たな取得戦略との共存が求められている。

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