◎ウクライナ軍は西側から供与された兵器、特に米軍の高軌道ロケット砲システム「ハイマース」を使って効果的に前進しているとみられる。
2022年10月9日/ウクライナ、南部ザポリージャ州、ロシア軍のミサイル攻撃で大きく破損したアパート(Leo Correa/AP通信)

ウクライナ南部ヘルソン州の親ロシア首長は13日、ウクライナ軍の猛攻が続いているとして、市内の住民に避難を呼びかけた。

サルド(Vladimir Saldo)首長はテレグラムに声明を投稿。ウクライナ軍のロケット攻撃に圧倒されていることを認め、市内の住民にロシアもしくはクリミア半島に避難するよう呼びかけ、ロシア政府に救援を要請した。

ロシア国営メディアはフスヌリン(Marat Khusnullin)副首相の声明を引用し、「ヘルソン州政府の支援要請に応じる」と報じた。

サルド氏は声明の中で、「ウクライナ軍は民間人を標的にしている」と非難したが、ウクライナ政府はこの主張をロシアの偽旗作戦と一蹴している。

ウクライナ軍は今週、東部ヘルソン州のいくつかの地域を奪還し、南部でも攻勢を強めている。米シンクタンク戦争研究所はウクライナ軍がヘルソン州の州都ヘルソン市に迫っていると報告した。

ロシア南部とクリミアの部隊を統括するフスヌリン副首相は声明で、「政府はヘルソン州の住民のロシア国内への移住を支援する」と述べた。

またフスヌリン氏は避難者に無料の宿泊施設と日用品などを準備すると約束した。

一方、ロシア国営タス通信は13日、ヘルソン州の最初の避難グループが14日にロシア南部ロストフ州に到着すると報じた。

タス通信はロストフ州知事の声明を引用し、「我々はヘルソン州から逃れた避難民をひとり残らず受け入れるだろう」と報じている。

この避難グループが自主的に避難を決めたかどうかは不明である。ウクライナ政府は多くのウクライナ市民がロシアに強制連行されていると非難している。

ウクライナ軍は西側から供与された兵器、特に米軍の高軌道ロケット砲システム「ハイマース」を使って効果的に前進しているとみられる。

ウクライナ軍はドニエプル川西岸に前線を形成したロシア軍の補給路を断ち、前線を大きく切り崩そうとしている。これが成功すれば、ヘルソン市奪還が現実味を帯びてくる。

戦争研究所と英国防省はヘルソン市を「クリミア半島を含む南部地域奪還のカギ」と指摘している。

ウクライナ軍は南部戦線の戦況をほとんど明らかにしていないが、ヘルソン市奪還がその南に位置するクリミア半島奪還のカギになることは間違いない。

サルド氏は、「州内の多くの町がウクライナ軍のロケット攻撃にさらされている」と報告した。

またサルド氏は「住宅や民間施設が攻撃の対象になっている」と非難し、市内の全住民、特にドニエプル川西岸の住民に速やかにロシアかクリミア半島に避難するよう求めた。

サルド氏はロシア政府に対し、住民の避難をバックアップするよう要請。「ロシアは国民を見捨てない」という、よく言われるフレーズを引用した。

プーチン(Vladimir Putin)大統領は先月末、ウクライナ南部のヘルソンとザポリージャ両州、東部ドネツクとルハンスクの計4州を併合すると宣言した。

ウクライナと西側諸国は併合を見せかけと糾弾し、対ロシア制裁の強化とウクライナが必要とする限り支援を継続すると約束した。

国連総会も12日、ロシアの併合を無効とする決議案を圧倒的賛成多数で可決し、ロシアを厳しく非難した。

143カ国が決議案を支持し、中国やインドを含む35カ国が棄権。ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、ニカラグアの5カ国が反対票を投じた。

総会でロシア関連の決議に反対票を投じた国は侵攻以来、最も多くなった。

2022年10月13日/ウクライナ、首都キーウの教会、兵士の葬儀(Efrem Lukatsky/AP通信)
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