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ブルガリア全土で反政府デモ、野党連合が主導、数万人参加

デモはソフィアの国会議事堂、政府庁舎、大統領府が集中するいわゆる「権力の三角地帯」に集中。スローガンは「辞任を」や「マフィア」などで、若者・学生の参加も目立った。
2025年12月10日/ブルガリア、首都ソフィア、政府与党に抗議するデモ(AP通信)

ブルガリア各地で10日、政府与党に抗議する大規模なデモ集会が行われ、数万人が参加した。

このデモは野党連合WCC-DB(We Continue the Change – Democratic Bulgaria)が呼びかけたもので、政治家の汚職や不正、来年度予算案への反発が発端となっている。

発端は2026年度予算案への強い反発だった。予算案は増税や社会保障拠出金の引き上げを含み、「庶民に重い負担を強いる」「既存政権の腐敗を隠すためのもの」と批判が広がった。これを受けて先週、数万人規模の抗議が起き、政府はこの予算案を撤回したが、市民の怒りは収まらなかった。

抗議の焦点は税制だけでなく、政権の中枢にいる政治家への不信、特に欧米から制裁を受けた政治家で実業家のペエフスキ(Delyan Peevski)氏の影響力を批判する声へと拡大した。

デモはソフィアの国会議事堂、政府庁舎、大統領府が集中するいわゆる「権力の三角地帯」に集中。スローガンは「辞任を」や「マフィア」などで、若者・学生の参加も目立った。

主催者側は参加者数が前週の5万人からさらに増え、10万人を超えたと報告している。抗議は平和的に行われ、暴力沙汰などの報告はなかった。

同日、野党側は政府与党に対する不信任決議案を提出。これは今年1月以降6度目の不信任案だ。さらに、ラデフ(Rumen Radev)大統領もデモを「事実上の内閣不信任投票」と評価し、議員たちに国民の声を尊重するよう呼びかけた。

今回の連帯デモには若年層、いわゆるZ世代を中心とする市民の強い政治参加が目立つという指摘がある。多くの若者が将来や生活の見通しの不透明さ、腐敗にまみれた政治構造への不満を抱えており、今回の運動は彼らの「世代としての声」を示す場にもなっている。

ブルガリアはかねてよりEU内で汚職や不透明な支配構造を批判されてきたが、今回のような大規模な市民運動が頻発する背景には、政府への根深い不信と、若い世代の将来への危機感があるとみられる。加えて、2026年1月に予定されるユーロ導入という国の大きな転換期を前に、国民が「どのような国にしたいか」を問う動きが高まっていると受け止められている。

今回の抗議が単なる反予算運動にとどまらず、政権交代や制度改革、汚職の根絶につながる“新たな政治のうねり”となるかどうかは今後の展開次第である。ただ、少なくとも国民の不満と若者の政治参加がこれまでとは異なる次元に移行しつつあることは明らかだ。

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