◎現地で活動する国境なき医師団は「少なくとも70人の死亡を確認した」と声明を出した。
1月21日、サウジアラビア主導の連合軍がイエメン西部の刑務所を空爆し、少なくとも100人が死傷した。
AP通信によると、イエメンの主要都市を支配しているシーア派武装勢力フーシの拠点のひとつもほぼ同じタイミングで攻撃を受けたという。
サウジアラビアはフーシ派が同盟国UAE(アラブ首長国連邦)の石油施設に自爆ドローン攻撃を仕掛けたことに激怒し、西部の港湾都市フダイダを爆撃した。
世界最悪の人道危機を引き起こしたイエメン内戦(サウジ連合軍vsフーシ派)の死亡者数は両軍合わせて13万人を超え、民間人約12,000人が殺害されたと推定されている。
国連や人道機関の報告によると、イエメンに閉じ込められた1,100万人以上の子供を含む少なくとも1,600万人が絶望的な飢餓に直面し、その多くが餓死の危機に瀕している。
フーシ政府のタハ・アル・モタワケル保健大臣は21日、AP通信の取材に対し、「刑務所にいた70人が殺され、多くが重傷を負っているため、犠牲者はさらに増える可能性がある」と述べた。
またモタワケル保健大臣は国際援助機関に支援と職員を送るよう呼びかけた。「国際社会はテロリストの大量虐殺を見過ごすべきではありません。イエメンの医療従事者はコロナの感染拡大とテロリストの攻撃の影響で疲れ果てています...」
フーシ派が運営するテレビ局は空爆から数時間後の刑務所の様子を中継した。報道によると、死亡者と負傷者はさらに増える可能性が高く、現地で活動する国境なき医師団も「少なくとも70人の死亡を確認した」と声明を出した。
国境なき医師団の現場責任者はAFP通信の取材に対し、「空爆の影響を受けた施設にはまだ多くの人が取り残されており、犠牲者はさらに増える可能性が高い」と述べた。「空爆に巻き込まれた人の数は把握できていません。確かなことは、がれきの下に多くの遺体があるということです」
国境なき医師団によると、1つの病院に200人以上の負傷者が搬送されたという。
刑務所以外の施設も空爆を受け、複数の死傷者が出たと報道されている。
人権NGOセーブ・ザ・チルドレンによると、刑務所への攻撃とほぼ同じタイミングでフダイダ南部の電気通信設備が破壊され、近くでサッカーをしていた子供3人が巻き込まれ死亡したという。
またセーブ・ザ・チルドレンは、「刑務所は拘留された亡命希望者も収容している」と明らかにした。フーシ派は支配地域の住民の亡命を認めておらず、国際社会に認められた政府の領土または隣国に亡命しようとする市民を「裏切り者」と呼んでいる。
フーシ派のテレビ局は電気通信設備が破壊された影響でフダイダのインターネット通信はほぼすべて遮断されたと報じた。
サウジアラビア軍は21日の声明でフダイダのフーシ派施設を空爆したと認めたが、刑務所には言及しなかった。連合軍はフダイダ港を「海賊の拠点」と呼び、イランはフーシ派を支援するために兵器を密輸していると非難した。
イランはフーシ派への兵器提供を否定しているが、国連、西側諸国、多くの専門家が兵器が提供された証拠を示している。
一方、フダイダの一部の住民は地元メディアの取材に対し、「すべて米国のせい」と主張した。「米国はテロリストに空爆を指示しています。殺し屋は今すぐイエメンから去りなさい」
米国はサウジ連合軍に武器を供給していたが、戦争の大部分が膠着状態に陥ったことを受け、供給を停止している。
フーシ派の報道官は21日遅くの声明で、「UAEの外国企業はこの地域(中東)から速やかに撤退しなければならず、とどまるようであれば何度でも攻撃を仕掛ける」と警告した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は21日の会見で17日のUAE爆撃を「重大な過ち」と呼び、厳しく非難した。
国連安全保障理事会も21日の決議でフーシ派を厳しく非難し、「民間人に対する凶悪なテロに関与した者に責任を負わせ、裁判にかける」と述べた。