◎この権限移譲がイエメン内戦に与える影響は不明である。
イエメンのハディ暫定大統領は7日、権限を新評議会に移譲すると発表した。
新評議会は8人で構成され、ハディ大統領の顧問であるアリーミ元内相が議長を務める。アハマル暫定副大統領は解任された。
イエメン内戦を終結させる国際的な取り組みと2カ月の暫定停戦の中、新評議会はイラン、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、アルカイダ、イスラム国(ISIS)などの支援を受けるシーア派反政府武装勢力フーシとの交渉を引き継ぐことになる。
サウジ連合軍はハディ大統領の決断に一役買ったと伝えられている。サウジとUAEは内戦で荒廃したイエメンに30億ドル(約3,700億円)の支援を約束し、権限移譲を歓迎した。
この進展がイエメン内戦に与える影響は不明である。
サウジ主導の連合軍はハディ政権を復権させるために、2014年からイエメンの大部分を支配するフーシ派と戦っている。
イエメン内戦は近代史上最悪の人道危機を引き起こし、国連のまとめによると、戦闘で死亡した兵士および民間人は15万人を超え、1,000万~2,000万人が国内避難民になり、1,100万人以上の子供が人道支援を必要としている。
これまでのところ、国連の調停努力はほとんど実を結んでおらず、今週の暫定停戦発効まで地上戦、空爆、ミサイル攻撃が続いていた。
フーシ派の報道官はツイートで新評議会を一蹴した。「我がイエメン国民は、国境を越えた非合法な当事者による非合法な決定に関心がない」
国際危機管理グループのイエメン専門家であるソールズベリー氏は今回の権力移譲を「内戦が始まって以来、反フーシ派の内部構造における最も重大な変化だ」と評価した。
ハディ大統領は国営メディアが7日に放送した演説で、「新評議会が政府を運営し、フーシ派との交渉を主導する」と述べた。
国連公認の暫定政府は内紛や権力争いに悩まされてきたが、サウジアラビアとつながりの深いイエメン親政府派と親サウジ派が先週から内戦終結に向けた本気の話し合いを続けていることを考えると、今回の権力移譲にサウジが関与していることはほぼ間違いない。
ハディ大統領は、「私は不可逆的に私の全権を新評議会に移譲する」と宣言した。また軍の有力者であるアハマル副大統領を解任し、その権限も新評議会に移譲した。
新評議会の議長を務めるアリーミ元内相はサウジアラビアや国際的なイスラム主義運動であるムスリム同胞団のイエメン支部である有力政党イスラと密接な関係を保っている。
フーシ派は開戦後まもなく首都サヌアを占領し、ハディ政権を追放した。その数カ月後、サウジ連合軍はハディ政権の復権を目指して参戦したが、内戦は膠着状態に陥り、泥沼化し、地獄の代理戦争と化してしまった。
サウジ連合軍は当時、安全上の問題からハディ大統領を南部の港湾都市アデン(暫定政府の暫定首都)に戻るのを阻止したと伝えられている。
またアデンでは2019年にUAEの支援を受ける分離主義勢力が一時的に街を占拠し、連合軍の内紛に発展した。同年末、サウジの仲介でハディ大統領と分離主義勢力の和解が試みられたが、権力闘争は今も続いている。
UAEの影響力はハディ政権の統治をより困難にした。UAEはイエメンの民兵を訓練し、数億ドル規模の兵器を提供し、武装させ、市内に立派な刑務所も建設した。
世界最悪の人道危機を引き起こしたイエメン内戦は国際社会の頭痛の種であり、米国を含むあらゆる国を悩ませている。フーシ派はラマダン開始から2カ月の暫定的な停戦に合意した。内戦が停止したのは約6年振りである。
国営サウジ通信によると、王国はハディ大統領の決定を歓迎し、内戦の政治的、最終的、包括的な解決策を見つけるために、国連主導のフーシ派との交渉に乗り出すよう新評議会に促した。
またサウジ通信は、サルマン皇太子が新評議会議長らと会談したと報じた。
ハディ大統領はアラブの春によりサーレハ前大統領の支配が終わった2012年に民主化への移行を任され、大統領に就任した。