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イエメンのサウジアラビア連合、南部暫定評議会(STC)に警告

サウジ連合の報道官は声明で、STCによる軍事的な「動き」が現在進行中の緊張緩和策を損なうようなものとなれば、それに対処すると警告した。
2025年12月15日/イエメン、南部暫定評議会(STC)の戦闘員(ロイター通信)

イエメン南部をめぐる政治・軍事的緊張が高まる中、サウジアラビア主導の連合は12月27日、南部の主要勢力である南部暫定評議会(STC)に対し、東部ハドラマウト州での軍事行動に対して強い警告を発した。サウジ連合の報道官は声明で、STCによる軍事的な「動き」が現在進行中の緊張緩和策を損なうようなものとなれば、それに対処すると警告した。

この声明は国連の承認を受けるイエメン政府からの要請を受けて出されたもので、STCに関連する武装勢力による「違反行為」から民間人を守るために即時対応するよう求めたものだとしている。

STCはアラブ首長国連邦(UAE)からの支援を受けつつ、南部アデンを事実上掌握し、南部全域で影響力を拡大してきた。12月初旬には、政府軍やその支持勢力からハドラマウトやその隣接地域を奪取したと主張しており、これに対しサウジ側は反発を強めている。STCは正当性を強調しつつ、地域の治安確保やフーシ派に対する防御を理由に軍事展開を正当化しているが、サウジ側はこれを「抑制不能な行動」とみなしている。

サウジ連合は、STCの部隊がハドラマウト州などから撤退し、地元当局に平和的に引き渡すよう求めるとともに、いかなる軍事的動きも「緊張緩和努力を損ない、民間人の安全を脅かすもの」であれば即応措置を取ると警告した。また連合は国際的に承認されたイエメン政府を支持し、すべての当事者に対して自制と平和的解決を呼びかけていると強調した。

これに先立ち、サウジの国防相はSNSへの投稿で、STCがUAEやサウジが仲介する緩和策に応じ、過度な軍事拡大を停止し、対話による解決に戻るよう訴えた。また国防相はSTCが占拠した地域から撤退し、自発的かつ平和的な方法で統治機構に戻すことが「時宜にかなっている」と表明し、南部の問題はダイアログと合意を通じて解決されなければならないとした。

一方、STC側はこれまでの撤退要求を拒否し、南イエメンの独立に向けた取り組みを繰り返し主張している。独立国家としての南部再建は同組織の長年の目標であり、ハドラマウト州などの掌握はその一環だとしている。しかしこの動きは、2014年に北部の大部分を掌握したフーシ派と対峙する政府内部の亀裂を深める可能性があるとの懸念を引き起こしている。

専門家は、STCと政府の対立がエスカレートすれば、2018年のストックホルム合意以降続いてきた緩和努力を損ない、イエメン内戦全体の安定化を阻害するとの見方を示している。また、UAEとサウジの間でも微妙な立場の違いが表面化しており、同地域における戦略的利益や影響力を巡る緊張が背景にあると分析されている。緊張緩和を目指す国際社会は両者への外交的圧力を強めており、平和的な解決に向けた交渉の継続が求められている。

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