◎国際的に認められたイエメン政府とフーシ派の戦争は2014年に本格化し、これまでに民間人約12,000人を含む13万人以上が殺された。
2021年3月2日/イエメン、フーシ派の占領下に置かれている首都サナアの病院(ゲッティイメージズ/モハメッド・フワイス/AFP通信)

イエメンの現地メディアによると、北部地域のコロナウイルス患者は治療を受けることができず、確認されただけでも数百人が苦しみ、悶え、死亡したという。AP通信の取材に応じたナセル氏(仮名)は母親のために医師を探したが、間に合わなかった。しかし、母親の死はイエメンの公式死亡者には含まれない。

首都サナアを含む国土の大半を支配しているシーア派反政府武装勢力フーシはコロナウイルスの感染拡大には注意を向けておらず、公式発表によると、イエメン北部地域のコロナ累計感染者は4人、死亡者は1人だという。

国際的に認められたイエメン政府とフーシ派の戦争は2014年に本格化し、これまでに民間人約12,000人を含む13万人以上が殺された。国連は今年、フーシ派の支配下に置かれている地域への水・食料・医療の提供が滞っており、問題を解決できなければ子供を含む民間人1,000万~2,000万人が餓死する可能性があると警告した。

AP通信の取材に応じた医師、支援団体の労働者、首都サナアの住民、そしてコロナウイルスで死亡したと思われる患者の遺族は、「脆弱な国民を危険にさらすフーシ派のせいで、致命的なパンデミックと飢餓は目の前に迫っている」と述べた。

ある医師は、「コロナで死亡した患者のデータは公表できず、ワクチンの情報もない」と語った。「ワクチンはありません。情報もありません。公の集会やコロナ対策のガイドラインもありません。マスク、食料、水、ここには何もありません...」

ナセル氏の母親の葬儀には数百人が出席し、数日後、40代の叔母がコロナで死亡し、親戚2人もコロナに感染し自宅療養を呼びなくされた。

AP通信の取材に応じた医師と住民によると、首都サナアと北部地域では少なくとも3回、コロナウイルスの急増が確認されたという。しかし、感染者数と死亡者数は誰にも分からず、コロナウイルスの存在を知らない住民もいると伝えられている。

フーシ派は住民にコロナウイルスに関連する情報を拡散しないよう命じており、医師によると、町は静まり返っているという。

アラブ世界で最も貧しいイエメンは6年以上続く内戦で荒廃した。サウジアラビア主導の連合軍は政府軍を支援しているが、イランの支援を受けるフーシ派に苦戦しており、内戦が終結する見通しは全く立っていない。

イエメンで活動している国連保健当局者はAP通信の取材に対し、「フーシ派はコロナウイルスが拡大していることを理解している」と語った。「首都サナアの医療機関は満員です。診察を希望する人は病院の外で寝泊まりして自分の順番を待っています」

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのイエメン研究者であるアフラ・ナセル氏は6月に公開したレポートの中で、「フーシ派はコロナウイルスを阻止するどころか、国際社会の支援を妨げている」と憤慨した。「イエメンの公式政府はコロナ対策に力を入れていますが、フーシ派はそれを邪魔し、破壊し、国民を殺しています」

イエメンの世界保健機関(WHO)代表であるアディハム・イスマイル博士は、「コロナワクチンをフーシ派の支配地域に導入することを望んでいる」と語った。フーシ派はワクチンを求めておらず、キャンペーン活動も行っていない。

フーシ派の支配下に置かれている一部の国民や医師は政府の管理する都市に密かに旅行し、ワクチンを接種した。

イエメン政府は3月、国連やWHOなどが主導するCOVAXイニシアティブからアストラゼネカワクチン36万回分を受け取り、4月からワクチン接種キャンペーンを開始した。COVAXが年末までに提供するワクチンは少なくとも190万回。

一方、フーシ派はサウジ連合軍との戦闘で死亡した高官の葬儀や新たな戦闘員を募集する数千人規模の集会を各地で開催している。集会に社会的距離の概念はなく、マスクも存在しない。

フーシ派の支配地のひとつにある墓地の労働者はAP通信に、「埋葬する場所がなくて困っている」と語った。別の労働者は2カ月ほど前から毎日30人以上を埋葬し、その多くが女性と高齢者だったと述べた。

イップ県北部にある病院の当局者は、毎日50人近くのコロナ感染者と思われる患者を診察していると語った。病院に検査キットはなく、医師は患者の体調を見てコロナか否かを判断している。

2020年8月22日/イエメン、首都サナア、シーア派反政府勢力フーシの戦闘員(AP通信/Hani Mohammed)
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