◎イエメンの国民1,600万人が致命的な飢餓の危機に直面している。
世界食糧計画(WFP)は22日、イエメンの国民1,600万人が致命的な飢餓の危機に直面していると警告し、現在同国に供給している食糧物資は世界の支援がなければ10月に大きく削減されると明らかにした。
WFPのデイヴィッド・ビーズリー事務局長は22日に開催されたイエメンの人道危機に関する会議の中で、「アメリカ、ドイツ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなどの主要国は今年初めにWFPに資金を提供してくれたが、資金には限りがあり、明らかに足りない」と語った。
ビーズリー事務局長は、「新たな資金提供がなければ食糧供給量は大幅に削減される」と警告した。WFPのデータによると、削減量は10月に320万人分、12月には500万人分に達する見込みだという。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は今年3月にスウェーデンとスイスが共催したオンライン会議の中で、イエメンを救済する資金38億5,000万ドル(約4,300億円)を加盟国に要求した。
しかし、アメリカを含む主要国はその半分にも満たない17億ドル(約1,900億円)の拠出を約束し、グテーレス事務総長を失望させた。
EUの当局者によると、国連は22日の会議の中で新たに6億ドルを確保したという。しかし、それでも目標額には届いておらず、WFPはまもなく資金が枯渇すると警告した。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はイエメンへの人道支援にさらに2億9,000万ドル、EUは人道支援と開発援助に1億1,900万ユーロを割り当てると発表した。
イエメンで活動している慈善団体オックスファムの代表は主要国の約束を歓迎したうえで、「資金が速やかに利用可能になることを望んでいる」と述べた。
イエメンの首都サナアを含む北部地位の大半はイランの支援を受けるシーア派反政府武装勢力フーシの管理下に置かれている。アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領率いる政府軍はサウジアラビア主導の連合軍の支援を受けフーシ派と戦っているが、2014年に勃発した内戦が集結する見通しは全く立っていない。
アメリカはサウジ連合軍に武器を供給していたが、戦争の大部分が膠着状態に陥ったことを受け、直接の関与を停止した。
WFPのビーズリー事務局長は内戦を終結させなければならないと加盟国に呼びかけた。「そして、資金の捻出に苦労している主要国は内戦の終結に向けた取り組みを強化してください...」
ビーズリー事務局長は、国民は食糧価格の高騰や通貨切り下げの影響などで財産を全て失ったと述べた。「人々は食料・水・医療を完全に断たれています。彼らには何もありません」
ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は、イエメンの子供1,130万人が人道支援を必要としていると訴えた。「イエメンでは現在、10分に1人の割合で子供が餓死もしくは栄養失調に関連する病で亡くなっています。食糧の供給量が減少すれば、飢餓はさらに悪化するでしょう...」
EUの危機管理委員ヤネス・レナルシック氏は、「イエメンが必要とする人道ニーズは前例のないレベルにまで高まっている」と述べ、全ての戦争当事者に無制限の人道的アクセスを要求した。
ブリンケン国務長官は加盟国に可能な限り迅速に公約を果たすよう要請し、他の国々にも資金提供を呼びかけた。
世界最悪の人道危機を引き起こしたイエメン内戦の死亡者数は両軍合わせて13万人を超え、民間人約12,000人が殺害されたと推定されている。
一方、フーシ派は今月11日、港湾都市モカにある人道援助倉庫を弾道ミサイルと爆発物を積んだドローンで破壊した。イエメンの外務省によると、爆発で食糧を含む多くの貴重な物資が焼失したという。