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イエメン南部で戦闘激化、STC系勢力の攻撃で治安要員32人死亡、45人負傷

イエメン国内の複雑な政治状況を背景に、治安の悪化は政府とSTCの確執に留まらず、国際的な関与と地域勢力の思惑も絡んでいる。
2025年12月9日/イエメン、アデンの政府庁舎近く、治安部隊の兵士(ロイター通信)

イエメン南東部ハドラマウト州で12日、南部暫定評議会(STC)に関係する武装勢力による攻撃で少なくとも32人の治安要員が死亡、45人が負傷した。国連の承認を受けるイエメン政府が明らかにした。

それによると、同州内の複数地域で治安部隊とSTC系勢力による戦闘が激化しているという。

STCは南部独立を目指す主要勢力で、政府軍や他の部族勢力と対立関係にある。特に近年は石油資源や戦略的要地を巡る戦闘が深刻化しており、ハドラマウト州など南部の広範な地域で影響力を拡大している。

STC側はこれら地域における支配を強調し、東部および南部全域で存在感を高めている。

この攻撃はSTC系勢力が軍事的優位を強める動きの一環とみられる。特にハドラマウト州では先週にかけてSTCが軍事基地や政府関連施設を掌握したとの報告があり、治安当局とSTC間の対立が軍事衝突として噴出している。

現地では病院が武装勢力に占拠され、負傷者が連行されたとの情報もあり、医療機関の安全確保や人道的配慮を欠いた行為として批判が強まっている。

イエメン国内の複雑な政治状況を背景に、治安の悪化は政府とSTCの確執に留まらず、国際的な関与と地域勢力の思惑も絡んでいる。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は長年にわたりイエメン内戦に介入してきたが、特にUAEはかつてSTCを支援してきたとされる。

これに対し、サウジの支援を受ける政府は治安回復と主権維持を強調しつつ、STC側の武装行動を非難している。最近では、両国が南部の緊張緩和を図るために合同使節団をアデンに派遣し、対話を進める動きもみられるが、現地の状況は依然として収束の兆しを見せていない。

今回のハドラマウト州の衝突はイエメン南部における統治権を巡る争いが武力衝突へと発展している現実を浮き彫りにした。治安当局は今後も局地的な戦闘が続く可能性を指摘しており、民間人や治安部隊の安全確保が至上命題となっている。内戦状態が続くイエメンでは複数の武装勢力が並存し、国際社会による和平努力が進む一方で、地域の安定化には程遠い状況が続いている。

今回の衝突について、首都サヌアを含む同国の大半を支配するフーシ派はコメントしていない。

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