◎爆発は新内閣の閣僚を乗せた飛行機が着陸した直後に発生した。
◎イエメンの外相は、「攻撃はシーア派分離主義勢力フーシによるもの」と主張した。
12月30日、イエメンの治安当局は、南部の都市アデンの空港で爆発が発生し、少なくとも25人が死亡、110人が負傷したと発表した。
爆発は新内閣の閣僚を乗せた飛行機が着陸した直後に発生したという。
治安当局は爆発の原因を明らかにしていない。地元メディアによると、犯行声明を出したグループは現時点では確認されていないという。
当局者は声明で、「政府の飛行機に搭乗していた者に負傷者はいない。また、閣僚が向かった市内のマシク宮殿の近くで別の爆発が発生した」と述べた。
サウジアラビアのアルアラビーヤのテレビチャンネルによると、サウジアラビア主導の連合軍が宮殿に接近したドローンを撃墜したという。
イエメンの内閣改造は、アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領とアラブ首長国連合(UAE)やイランの支援を受けるシーア派分離主義勢力「フーシ」との関係を修復する第一歩と見なされていた。
サウジアラビアの支援を受けるイエメン政府は、イラン北部の大部分と自国の首都サナアを支配するフーシとの戦争を継続している。
イエメン、アデン国際空港
飛行機に搭乗していたナギバル・オーグ通信大臣はAP通信の取材に対し、「爆発は2回発生した。ドローンによる攻撃と聞いた」と述べた。
マイーン・アブドゥルマリク・サイード首相と他の閣僚は、治安当局に連れられマシク宮殿に戻ったという。
治安当局のアル・アウダ氏は声明で、「飛行機が爆撃されていたら、大惨事になっていた。着陸時間は直前に変更されていたが、攻撃はそれに対応した」と述べた。
アフマッド・アワド・ビン・ムバラク外相は証拠を提示することなく、「攻撃はフーシによるもの」と主張した。
アデンの保健局のモハメッド・アル・ルービッド副所長はAP通信の取材に対し、「爆発で少なくとも16人が死亡し、60人が負傷した」と語った。その後、内務省は死亡者の数を少なくとも25人、負傷者を110人と発表した。
赤十字国際委員会(ICRC)によると、航空輸送活動の調整を支援したイエメンの市民とルワンダのX線技術者、その他の関係者が爆発で死亡したという。
レバノンの公式通信社は、イエメンのICRCの報道官でレバノン在住のヤラ・クシャワジャ氏が死亡したと報じた。
ICRCの運営責任者、ドミニク・スティルハート氏は声明で、「ICRCとイエメンの市民は突然発生した悲劇に打ちのめされている」と述べた。
イエメンの国連特別大使を務めるマーティン・グリフィス氏は、「暴力行為は絶対に容認できない。イエメンを平和への道に戻すことの重要性を痛感させられた」と攻撃を非難した。
フーシを支援するUAEの外務大臣は爆発について、「政府と分離主義者との権力共有協定の破壊を狙ったものだろう」と述べた。
エジプト、ヨルダン、アラブ連盟、イエメンの米国大使も攻撃を非難した。
サウジアラビアに亡命中のハーディー大統領は、今月初めに内閣改造を発表した。なお、内閣改造はハーディー大統領とフーシが結んだ権力共有協定の一部だった。
イエメンを荒廃させた内戦は、UAEやイランの支援を受けるフーシが首都サナアを2014年に占領し、指導者を追い出したことで始まった。
2015年、イエメン政府を支援するサウジアラビア主導の連合軍とフーシの戦いが本格化し、イランの影響力を抑制した。それ以来、10万人以上の戦闘員と民間人が死亡したと伝えられている。
国連によると、食糧不安の「緊急段階(飢饉の前兆)」に直面するイエメン市民は、2021年前半までに360万人から500万人に増加すると予想されているという。
また、飢餓状態にある市民の数は、2021年1月から6月の間で16,500人から47,000人に増加する可能性があると警告した。
イエメン内戦について
(2015年)
・1月22日:フーシのクーデターでハーディー暫定大統領とバハーハ首相が辞任。
・2月6日:フーシが議会を強制解散させ、暫定統治機構「大統領評議会」を開設した。
・2月21日:ハーディー暫定大統領が辞意を撤回、フーシ派との対立激化。
・3月25日:フーシ派がハーディー暫定大統領の拠点を襲撃。ハーディー暫定大統領はボートで脱出した。
・3月26日:サウジアラビア連合軍、空爆を開始。
・7月17日:ハーディー政権、フーシ派から第2の都市アデンを奪還したと宣言。
・8月4日:ハーディー政権、フーシ派からアルアナド空軍基地を奪還したと宣言。
・8月11日:ハーディー政権、アビヤン州を制圧。
・8月15日:ハーディー政権、5つ目の州を奪還。サウジアラビア連合軍の支援と空爆で攻勢に出る。
・8月19日:人道支援団体アムネスティ・インターナショナルは、首都サナア、アデン、タイズへの攻撃中に、サウジアラビアが戦争犯罪を行なっていると指摘、非難した。
・8月24日:世界食糧計画(WFP)、600万人が深刻な食糧難に陥り、緊急支援を必要としていると警告。
・9月22日:ハーディー暫定大統領が、半年ぶりにイエメンに帰還。
・10月15日:フーシがサウジアラビアの空軍基地に弾道ミサイルを発射。
(2016年)
・4月3日:ハーディー暫定大統領がバハーハ副大統領兼首相を解任。
・9月9日:米軍とイエメン軍、国際テロ組織アラビア半島のアルカイダ(AQAP)に捕らわれていた人質の救出作戦を実行。人質3人は抗戦中に死亡した。
・10月4日:フーシ派がハーディー政権に対抗する「救国政府」樹立を宣言。
(2017年)
・5月:フーシ、国内のコレラ感染が急速に悪化したことを受け、非常事態を宣言。
・6月5日、イエメンとカタールが国交断絶。カタール政府がフーシを支援していたため。
・11月4日:フーシがサウジアラビアの首都リヤドをに弾道ミサイルを発射。
・11月6日:サウジアラビアがイランの支援を防ぐ名目でイエメンの国境を封鎖。
・12月4日:フーシがサーレハ前大統領の乗った車を襲撃、殺害したと発表。