米国、ヨルダン川西岸の「ユダヤ人入植地」で旅券サービス提供
今回の取り組みは米国民全てに領事サービスを行き渡らせるという米政府の方針に沿ったものであり、過去にはエルサレムやテルアビブでのみ提供されていたサービスが初めて占領地で行われたことになる。
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米国は27日、占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区にあるユダヤ人入植地で初めて旅券(パスポート)サービスを行った。米国務省と在イスラエル・米国大使館によると、27日に西岸の2つのユダヤ人入植地で米国市民に対する旅券更新・発給のための出張サービスを実施したという。今回の取り組みは米国民全てに領事サービスを行き渡らせるという米政府の方針に沿ったものであり、過去にはエルサレムやテルアビブでのみ提供されていたサービスが初めて占領地で行われたことになる。
在米国大使館によると、この出張サービスは一日限りの試験的な実施だが、今後数カ月間のうちに西岸の別の入植地、さらにイスラエル国内の都市でも同様のサービスを展開する計画があるという。これまで米国は西岸やその他地域でも領事サービスを提供してきたが、入植地内での提供は今回が初めてである。入植地には米国とイスラエルの二重国籍を持つ市民が数万人居住していると見られるが、正確な人数は把握されていない。
この動きは米国の外交政策における重要な変化として受け止められている。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は国際法上、違法地域とみなされており、国連をはじめとする多くの国際機関や国々がその存在と拡大を批判してきた。イスラエル政府はこれを否定し、西岸を「ユダヤの歴史的・宗教的故地」と強調する。今回の領事サービス提供はそうした入植地への米国の姿勢を実質的に後押しするものとして、国際社会やパレスチナ側から批判の声が上がっている。
イスラエル国内では今回の措置に対し歓迎の意見が広がっている。イスラエル外務省は声明で、米国が「ユダヤ人共同体に対して領事サービスを拡大したことを歓迎する」と表明した。また地元自治体の関係者も「歴史的な日」と称賛し、住民にとって利便性の向上につながるとして歓迎の意を表明している。
一方でパレスチナ側は強く反発している。パレスチナ自治政府はこの取り組みについて、「国際法違反」であり、占領を助長するものだと非難した。また、イスラム組織ハマスやイスラム聖戦などの抵抗運動も米国の動きを「占領と併合を事実上認めるもの」と批判している。これらの組織は今回の措置が地域の緊張を高め、和平プロセスの前提となる「二国家解決」をさらに遠ざける可能性があると警告した。
この背景には、イスラエルのネタニヤフ政権が西岸へのユダヤ人入植活動を後押しし、パレスチナの土地取得を容易にする政策を進めていることがある。これに対し国際社会の多くは「事実上の併合」として懸念を表明し、入植地拡大が恒常化することでパレスチナ国家の実現可能性が損なわれているとの批判が強まっている。
米政府は今回の領事サービス提供について「全ての米国市民に対するサービス向上を目的とする」と説明しているが、その政治的意味合いや地域情勢への影響については今後も国際的な注目が集まる見込みである。
