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米国、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でパスポートサービス提供へ

この動きは、長年の中東情勢の緊張を一段と複雑化させる可能性もある。
パレスチナ自治区、ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地(Getty Images)

米国は24日、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地において、現地でのパスポート発給サービスを提供する方針を明らかにした。国務省によると、今週中にも西岸の入植地で在米国民向けの領事サービスが開始される見込みである。これにより、これまで在イスラエル・米国大使館や領事館でしか受けられなかったパスポート関連手続きが、占領地域内でも可能となる。

今回の措置は在外米国市民へのサービス提供範囲を拡大する狙いがあると米側は説明している。西岸の入植地には数万人規模の米国籍保持者、特に二重国籍者が暮らしており、これまでサービスを受けるためにエルサレムやテルアビブまで移動する必要があった。新たにパスポート取得や更新、紛失した場合の対応といった通常の領事業務を現地で行うことで、これら市民の利便性が向上するとの見方が出ている。

しかしこの動きは、長年の中東情勢の緊張を一段と複雑化させる可能性もある。国際社会の大多数はヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植地を国際法違反とみなしている。イスラエル政府はこれを拒絶し、今回の米国の対応についても「在米国民支援の一環」と説明しつつも、政治的な評価は分かれる状況だ。

パレスチナ側は長年、西岸を将来の独立国家の中心と位置づけ、入植活動や併合の動きを強く警戒してきた。入植地での米国の領事サービス提供はパレスチナ自治政府および支援国から「占領の正当化につながる」といった批判を招く可能性がある。これまでの国際的な合意や和平プロセスに影響を与えるとの懸念も指摘されている。

イスラエルではネタニヤフ政権が西岸での入植地拡大政策を推進しており、最近では入植者による土地取得や住宅建設を容易にする法案が閣議で承認された。これに対してはパレスチナ側のみならず、国際機関や諸外国からも懸念の声が上がっている。米国の今回の措置がこうした動きとどのように関連するかは注目される。

在米国大使館は今回のサービス提供について、在外米国市民への支援強化が目的で、政治的意図はないと説明しているが、西岸を巡る緊張感の高まりの中で、今回の対応が地域情勢や和平プロセスにどのような影響を及ぼすかは今後の焦点となる。

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