◎標的はイラクとの国境付近に位置する施設で、イランの支援を受ける民兵「カイティブ・ヒズボラ」の拠点のひとつと伝えられている。
2月25日、米軍はシリア国内で活動するイランの民兵組織への空爆を決行した。この空爆は2月15日にイラクで発生した米軍に対するロケット攻撃の報復措置(民間請負業者1名が死亡、負傷者数名)である。
標的はイラクとの国境付近に位置する施設で、イランの支援を受ける民兵「カイティブ・ヒズボラ」の拠点のひとつと伝えられている。
ロイド・オースティン国防長官は記者団に対し、「私たちはイラン民兵の施設のみを狙う。攻撃は完璧に遂行されるだろう」と述べ、空爆完了後、「施設はシーア派過激派組織の拠点として利用されていた」と強調した。
オースティン国防長官はコメントの中で、「バイデン大統領に報復攻撃を勧めた」と述べた。
ロイド・オースティン国防長官:
「エルビル(イラク)で発生したロケット攻撃に対する政権の行動は、民間請負業者や連合軍の安全を確立するうえで欠かせないものであり、私たちは正しい判断を下したと確信している」
当局によると、現地に派遣された米軍用機2機のうち1機が爆弾を少なくとも1発投下したという。当局者はABCニュースに、「一握りの死者を出した可能性がある」と述べた。
国家安全保障アナリストは、イラクではなくシリア国内で活動するイラン民兵への空爆は賢明な判断と評価した。
中東防衛副次官補のミック・マルロイ氏はABCニュースの取材に対し、「今回の空爆は、イランに民兵を使った代理攻撃でも責任を取らせるというメッセージを送りました」と語った。
ミック・マルロイ氏:
「バイデン大統領はイスラム国(IS)との戦いにおける重要なパートナーであるイラク政府に配慮し、イラクではなくシリア(で活動するイラン民兵)を空爆すると決断した可能性があります」
イラクとシリアでイランの代理民兵を研究しているワシントン近東政策研究所のフィリップ・スミス氏は、今回の空爆を非常に賢明な判断と評価した。
フィリップ・スミス氏:
「イラク国内で空爆を決行すれば、余計な混乱と動揺を招く恐れがあります。シリアの国境付近の施設を狙ったのは、民間人の被害を最小限に抑え、イランに譲歩する姿勢を見せているアメリカに対するイラクの不信感を排除するためだと思います」
「イランは2月15日のロケット攻撃でバイデン政権の動きをテストしました。これはイランらしいやり方です。空爆の標的は慎重に、適切に検討されました。イラクではなくシリアに爆弾を落としたことが証拠です」
国防総省は、イランの民兵によるロケット攻撃が以前から頻発していたにも関わらず、2月15日の攻撃でイラン政府を非難しなかった。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は先週の会見で、「アメリカは攻撃に対応する権利を留保する」と述べ、しかるべきタイミングでイランに報復措置を取ると示唆していた。
イラク北部のクルド地域政府(KRG)は空爆の標的を25日の早い時点で特定し、情報をバグダッドのイラク政府と米軍に提供したと述べた。
カイティブ・ヒズボラは以前、連合軍の基地にロケット弾を撃ち込み、米兵と英兵を殺害し、14人を負傷させている。