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国連高等弁務官「虐殺を止めよ」イスラエルに要求 ガザ紛争

国連の調査委員会はイスラエルがガザでジェノサイド(集団殺害)を犯し、ネタニヤフ首相を含むイスラエル政府高官らがこれらの行為を扇動したと結論付けた。
2025年9月16日/パレスチナ自治区、ガザ地区南部(ロイター通信)

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のターク(Volker Turk)高等弁務官は16日、イスラエル政府に対し、パレスチナ・ガザ市への地上攻撃を直ちに停止するよう求め、戦争犯罪、人道に対する罪、さらにそれ以上の犯罪の証拠が増えつつあると指摘した。

ターク氏はジュネーブの記者団に対し、「非武装の女性、栄養失調の子供たち、障害を持つ人々が、再びこのような攻撃に遭うことが何を意味するか、ただそれだけを考えざるを得ない。虐殺を止めよ」と語った。

またターク氏は「パレスチナ人もイスラエル人も平和を求めて叫んでいる。誰もが終結を望んでいるのに、我々が目にするのは全くもって容認できないさらなる激化だ」と嘆いた。

そして、「イスラエルに対し、ガザへの無差別破壊を止めるよう強く求める」と述べた。

国連の調査委員会は同日、イスラエルがガザでジェノサイド(集団殺害)を犯し、ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相を含むイスラエル政府高官らがこれらの行為を扇動したと結論付けた。

イスラエル政府はこの指摘を「馬鹿げている」と一蹴した。

ターク氏は記者から「ガザにおけるイスラエルの行為はジェノサイドか?」と問われると、「我々は戦争犯罪や人道に対する罪が積み重なるのを目の当たりにしている。さらに深刻な犯罪の可能性すらある。ジェノサイドか否かは裁判所の判断に委ねられるが、証拠は積み上がっている」と答えた。

ジェノサイドは特定の民族、国民、人種、宗教、あるいは政治的・社会的集団などを組織的に破壊することを目的とした行為を指す概念である。国際的には1948年に採択された国連「ジェノサイド防止及び処罰に関する条約(Genocide Convention)」によって法的に定義されており、これにより国家や個人が責任を問われ得る国際犯罪として位置づけられた。

国連条約ではジェノサイドを次のように規定している。第一に、特定の集団の構成員を殺害する行為。第二に、集団の構成員に重大な身体的・精神的被害を与える行為。第三に、集団に属する子どもを強制的に奪う、あるいは出生を妨げるなどの手段によって集団の存続を妨げる行為。第四に、集団の文化や生活基盤を意図的に破壊する行為。これらはいずれも、単なる戦闘行為や内戦の混乱による被害ではなく、特定集団を意図的に抹消する意図(破壊の意思)が存在することが重要な要件となる。

ジェノサイドは国家や武装勢力によって計画的かつ組織的に行われることが多く、歴史上ではナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)、ルワンダのツチ族虐殺、ボスニア・ヘルツェゴビナでのセルビア人勢力によるムスリム住民の大量虐殺などが典型例として知られる。国際刑事裁判所(ICC)や特別法廷はこれらの事例に基づき、加害者に対する刑事責任を問う判決を下してきた。

現代においては、ジェノサイドは単に個別の殺害事件ではなく、社会や文化、経済基盤まで破壊する総合的な攻撃として認識されており、国際社会はその防止と加害者の処罰に法的・外交的手段を通じて取り組んでいる。したがって、ジェノサイドは「大量虐殺」や「戦争犯罪」とは区別され、対象集団を意図的に抹消する点において特異な犯罪類型であるとされる。

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