◎2018年に破綻したイラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは60%の高濃縮ウランを生産し続けている。
2023年2月7日/イギリス、ロンドン、IAEAのグロッシ事務局長(Alastair Grant/AP通信)

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ(Rafael Mariano Grossi)事務局長は7日、イラン核合意の再開に向けた外交努力を強化するよう求め、交渉が失敗に終われば中東情勢は急速に悪化する可能性があると警告した。

グロッシ氏はロンドンで開催されたイベントで講演し、「合意再開に向けた現在の外交動力は十分ではない」としながらも、IAEAに交渉に関与する権限はないと強調した。

またグロッシ氏は「持続可能な対話の再開と交渉の進展を強く望んでいる」と述べ、それが実現しなければ事態は急速に悪化しかねないと警告した。

2018年に破綻したイラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは60%の高濃縮ウランを生産し続けている。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用

イラン指導部はウランの平和利用を約束しているが、西側のアナリストは兵器開発が現実味を帯びてきたと警告している。

合意復活に向けた協議は昨年8月、西側のロードマップ提示で進展したようにみえたが、イランはこれをまだ受け入れていない。

グロッシ氏は先月、「イランはその気になれば数発の核兵器を製造できるだけの高濃縮ウランを保有している」と警告した。

しかし、合意再開に向けた外交努力はロシアのウクライナ侵攻にイラン指導部が兵器を供与したことで停滞し、これ以上の進展は難しいようにみえる。

グロッシ氏は「中東には特有の問題があり、外交努力が失敗すれば、事態はさらに悪化する」と指摘した。「中東の核拡散は誰の利益にもなりません。ただでさえ脆弱な地域情勢をさらに悪化させ、取り返しのつかない事態に発展する恐れがあります...」

核兵器を保有するイランの宿敵イスラエルは米国に交渉を破棄するよう迫っている。イスラエルは数十年前に核兵器を取得したと広く信じられているが、保有を認めたことはない。

2019年2月11日/イラン、首都テヘラン、星条旗を燃やす人々(Getty Images)
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