◎米軍とNATO軍は9月11日までにアフガニスタンから完全撤退する予定。
2018年/アフガニスタン、タリバンの戦闘員(Getty Images/AFP通信)

国連のアフガニスタン特別使節は22日、タリバンとアフガン政府を交渉のテーブルに戻すためにできる限りのことをするよう国際社会に促した。

デボラ・ライオンズ特別使節は安全保障理事会に、「アフガニスタンの政治、安全保障、和平プロセス、経済、人道危機への対処、コロナ対策など、全ての主要な取り組みは停滞している」と語ったうえで、「タリバンは5月以来、国内の370地区のうち50地区を占領した」と警告した。

米軍とNATO軍は9月11日までにアフガニスタンから完全撤退する予定。

ライオンズ特別特使は、「タリバンの侵攻および地区の占領は軍事作戦の強化に基づくもの」と述べた。「占領されたエリアは対象地区の州都を取り囲んでいます。タリバンは米軍およびNATO軍の完全撤退を見届け、これらの州都や別のエリアにも侵攻すると示唆しています」

地元メディアによると、タリバンは22日にアフガニスタンとタジキスタンの主要な国境検問所を占領したという。この国境検問所は、最近戦闘の激化が伝えられている北部クンドゥーズ州の端に位置する。

地元メディアによると、タリバンはクンドゥーズ州の州都以外は全て占領したと主張しているが、政府は同州のいくつかの地区を奪還し、作戦は継続中と述べたという。

クンドゥーズ州は戦略的に重要な場所と考えられている。タリバンは2015年と2016年に同州を占領したが、政府軍はNATOの支援を受け、奪還に成功した。

2021年5月9日/アフガニスタン、首都カブール郊外の軍事基地近く、銃を構えるアフガニスタンの兵士(AP通信/Rahmat Gul)

地元メディアは、「タリバンは軍の装備を押収し、兵士数十人を殺害または拘束した」と報じた。タリバンの死傷者は不明。

一方、アフガニスタン軍のスポークスマンは声明で、「奪われた領土を取り戻すための大規模な作戦をまもなく開始する」と述べたが、作戦の詳細やクンドゥーズ州の戦闘における死傷者については言及しなかった。

アメリカ主導の連合軍は2001年10月のアフガン侵攻でタリバンを含むジハード軍を追放した。この中には9.11同時多発テロの首謀者であるアルカイダのウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

ジョー・バイデン大統領はジハード主義者の西側諸国に対する陰謀や攻撃は一定レベルまで低下し、タリバンとアフガン政府の和平交渉も進展していると述べ、完全撤退を擁護した。

しかし、国連の高官は昨年、アルカイダの思想はタリバンの奥深くに根付いていると警告していた。

アフガニスタンのアシュラフ・ガニー大統領は、「政府軍はタリバンを含む反政府勢力を阻止することができる」と主張しているが、多くの専門家は、アフガンは米軍とNATOの撤退後、タリバンの手に落ちる可能性が高いと信じている。

バイデン大統領は完全撤退を発表した際、アフガニスタンを支援し続けると約束したが、「軍事的な支援ではなくタリバンとの和平協定に向けた外交的および人道的な支援」と強調した。

一方、隣国パキスタンのイムラン・カーン首相は、「パキスタンはアフガンの平和に向けたアメリカの活動を支援するが、米軍の基地になるつもりはない」と述べた。

アフガニスタンの指導者たちは、強力なパキスタン軍がタリバンを支援していると長い間非難してきた。

カーン氏は先日公開されたAxios HBOのインタビューの中で、「パキスタンは国内で活動している中央情報局(CIA)のアルカイダ、イスラム国関連グループ、タリバンに対する国境を越えたテロ対策任務の遂行を絶対に許可しない」と断言した。

2021年4月14日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、米軍のアフガニスタン撤退を発表するジョー・バイデン大統領(Getty Images/アンドリュー・ハーニック/AFP通信)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク