イスラエル大統領がイギリス首相と会談、厳しい意見も
ガザ紛争以降のイギリスとイスラエルの関係は同盟的結びつきを再確認する一方で、民間人犠牲の増大を前に国内外で強い圧力を受ける複雑な構図を示している。
とイスラエルのヘルツォグ大統領(ロイター通信).jpg)
イスラエルのヘルツォグ(Isaac Herzog)大統領が10日、訪問先のイギリス・ロンドンでスターマー(Keir Starmer)首相と会談した。
イスラエル軍は9日、パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスの幹部を標的にカタール・ドーハに攻撃を行ったと発表。ハマスのメンバー5人が死亡したと明らかにした。
カタール内務省は治安当局者1人が死亡し、数人がケガをしたと報告している。
スターマー氏はこの攻撃を厳しく非難していた。
ヘルツォグ氏は声明で、「厳しい、強い発言もあったが、同盟国同士が会談する際には議論も当然あり得るだろう」と述べた。
またヘルツォグ氏は、スターマー氏のパレスチナ国家承認計画とガザ地区における人道支援に関する見解が意見の相違の根源であると述べ、イギリス政府に対し、イスラエルにこの問題を調査する代表団を送るよう要請した。
イギリスはフランスやカナダなどと共に、ガザ紛争が停戦などの条件を満たさない場合、今月下旬の国連総会でパレスチナ国家を承認するとしている。
23年10月にガザ紛争が勃発すると、イギリス政府はイスラエルの「自衛権」を強く支持した。当時のスナク首相はガザ紛争発生直後にイスラエルを訪問し、連帯を表明するとともにハマスの先制攻撃を断固として非難した。
イギリスは米国と同調しつつ、イスラエルの安全保障を支持する立場を維持したが、同時に民間人犠牲の拡大を懸念し、国際人道法の順守も呼びかけた。
その後、ガザでの空爆と地上作戦によって死者が急増すると、イギリス国内では強い反発が広がった。ロンドンを中心に大規模な反戦デモが頻発し、労働党内でも停戦要求が強まった。
当時の保守党政権はイスラエル支持の姿勢を崩さなかったが、「即時停戦」には慎重で、代わりに「人道的休戦」や人道支援ルートの確保を求める形にとどまった。この姿勢は人道的観点から不十分との批判を受け、国内世論の分断を招いた。
外交面では、イギリスは米国や欧州諸国と協調しつつイスラエルへの軍事的支援は限定的にとどめ、主に防衛技術協力や情報共有を中心に関係を維持した。兵器輸出についてはイスラエル向けのライセンス停止を求める声が国内で高まったが、政府は「防衛上正当な範囲」として継続を容認した。この点で、イギリスはEU主要国よりもイスラエル寄りの姿勢を示した。
2024年以降、国際社会が停戦や二国家解決の枠組みに言及する中で、イギリスも「持続可能な平和のための政治プロセス再開」を支持する立場に転じつつある。ただし、ハマスを排除したガザ統治のあり方については具体的提案を欠き、イスラエルへの圧力は限定的である。結果として、イギリスはイスラエルとの戦略的関係を維持しつつ、国内世論の批判と国際社会の人道的要請の間でバランスを模索する状況にある。
ガザ紛争以降のイギリスとイスラエルの関係は同盟的結びつきを再確認する一方で、民間人犠牲の増大を前に国内外で強い圧力を受ける複雑な構図を示している。