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UAE・EU自由貿易交渉が進展、戦略的な経済パートナー

この交渉は2025年初頭に正式に開始され、物品・サービス貿易や投資分野に加え、再生可能エネルギー、グリーン水素、重要な原材料といった戦略的な分野での協力拡大を目的としている。
アラブ首長国連邦とEUの国旗(Getty Images)

アラブ首長国連邦(UAE)とEU間で進行中の自由貿易交渉が急速に進展しているとの見通しが示された。UAEのEU担当特使が11日、明らかにした。

この交渉は2025年初頭に正式に開始され、物品・サービス貿易や投資分野に加え、再生可能エネルギー、グリーン水素、重要な原材料といった戦略的な分野での協力拡大を目的としている。両者はこれらの分野を重点対象として、将来的な経済関係の深化を図っている。

4回目の交渉ラウンドはUAE国内で週末に開催される予定であり、続く第5回ラウンドは2026年初頭に計画されている。UAEの担当特使は声明で、「これらの交渉ラウンドが進行すること自体が協議が実際に前進している証拠だ」と強調した。

UAEとEUの関係は既に強固なものとなっている。EUはUAEにとって原油・ガス以外の貿易における第2位の相手であり、UAE全体の非石油貿易の約8.3%を占める重要なパートナーである。逆にUAEは中東・北アフリカ地域におけるEUの最大の輸出先かつ投資先でもあり、双方にとって戦略的な経済パートナーとして機能している。

これらの交渉は包括的経済連携協定(CEPA)として進められているもので、関税撤廃や貿易障壁の削減といった伝統的な自由貿易協定の項目に留まらず、投資促進や規制調和など経済全般の協力強化を視野に入れている。EU側も高水準の貿易ルールを前提とした協定締結に意欲を示しており、UAEとの間で近代的かつ先進的な経済協力枠組みの構築を目指している。

この交渉は単なる二国間貿易拡大にとどまらず、グローバルなサプライチェーンやエネルギー転換の観点からも注目される動きである。再生可能エネルギーやグリーン水素といった次世代産業を巡る協力は、環境技術や低炭素経済への転換を進めるEUにとって戦略的な意義を持つと同時に、UAE側にとっても経済の多角化および長期的な持続可能成長戦略の一環である。

UAE政府は同時並行でEUとの戦略的パートナーシップ協定(SPA)の交渉も開始しており、貿易面だけでなく研究・イノベーション、教育や人的交流、地域の安全保障協力にまで対象を広げた包括的関係構築を目指している。これは両者の関係を制度的に強化する狙いがあり、自由貿易交渉と並行して進められている。

これらの動きはUAEの外交・経済戦略における重要な転換点ともいえる。今年はUAEとEUの関係を次のレベルへ引き上げる年として位置付けられており、交渉が円滑かつ迅速に進めば地域の経済統合や国際貿易体制全体にも影響を与える可能性がある。

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