◎有権者は28日の投票でエルドアン政権をあと5年延命するか、それとも新しい指導者に国を託すか選ぶことになる。
トルコ大統領選・決選投票に挑むエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領とクルチダルオール(Kemal Kilicdaroglu)党首の争いが険悪なムードに包まれている。
有権者は28日の投票でエルドアン政権をあと5年延命するか、それとも新しい指導者に国を託すか選ぶことになる。
14日に投開票された第1Rの投票率は87%。得票率はエルドアン氏が49.24%、クルチダルオール氏が45.07%、極右のオアン(Sinan Ogan)候補が5.28%だった。
穏健派とみられていたクルチダルオール氏は民族主義者の票を集めるために「シリア難民をひとり残らず追放する」と宣言。極右の歓声を浴びた。
エルドアン氏は数百万人のシリア難民を追放すれば恐ろしい人道危機を招くとクルチダルオール氏を糾弾。「あの男が当選すれば、トルコはテロ国家になるぞ」と煽った。
エルドアン氏は第1Rでクルチダルオール氏に250万票の差をつけており、オアン氏の支持も取り付けている。
しかし、第1Rを棄権した800万人の有権者次第で結果は変わる可能性がある。
クルチダルオール氏は今週、ユーチューブチャンネルで4時間に渡って有権者の質問に答えた。この動画の再生回数は2300万回を超えている。
クルチダルオール氏を支持するイスタンブール在住の男性はAP通信の取材に対し、「シリア難民がいなくなれば、トルコはもっと良くなる」と語った。「エルドアンはシリア難民を受け入れ、この国をダメにしました...」
国営アナトリア通信は社説で、「国際社会はシリア難民が大統領選の重要議題になったことをどう思っているか?」と伝えている。
クルチダルオール陣営は国内メディアの大半を支配するエルドアン陣営との差を埋めるべく、SNSを駆使して右寄りな政策を積極的に発信しているようだ。
欧米の選挙監視団は両陣営の衝突と中傷合戦に懸念を示し、「有権者は選択の権利を与えられているが、トルコは民主的な選挙に必要な基本原則を満たしていない」と批判した。
エルドアン氏は大統領在職中に巨大な権力を手に入れ、反対派に嫌がらせをしたり、取り締まったりしてきた。
首都圏の有権者推定500万人の多くはエルドアン氏を支持しているように見える。この地域の有権者の60%以上が第1Rでエルドアン氏に投票した。
クルチダルオール氏を支持する極右政党・勝利党は今週、クルチダルオール氏が国際法に基づいて、「1年以内にシリア難民を含む全国の難民推定1300万人を送還することに同意した」と主張した。
トルコはどの国よりも多くのシリア難民を受け入れている。
アナトリア通信によると、トルコではシリア、イラン、イラク、アフガン、パキスタンなどの不法難民600~700万人が生活しているという。
西側のアナリストはクルチダルオール氏の主張を「実行不可能」「極右の支持を集めるためのでまかせ」と指摘している。
クルチダルオール氏の公約を実現するためには1日あたり数万人の難民を送還する必要がある。
この主張は極めて不快なものだが、トルコに大きな変化をもたらすかもしれない。最新の世論調査によると、回答者の85%がシリア難民の帰国を望んでいる。