◎スウェーデンとフィンランドは昨年5月、ロシアのウクライナ侵攻を受け、NATOに加盟を申請した。
トルコのエルドアン大統領(右)とスウェーデンのクリステルソン首相(Bloomberg)

トルコ政府は17日、スウェーデンの首都ストックホルムの市庁舎近くにエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領を模したマネキンが吊るされた事件について、スウェーデン検察が調査は行わないと決定を下したことに怒りを表明した。

チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相は訪問先のイランで記者団の取材に応じ、スウェーデン検察の決定を「不合理」と非難した。

ストックホルムの抗議デモは先週行われ、トルコ政府の怒りを買った。

NATO加盟国の中で№2の軍事力を誇るトルコは、NATO加盟を目指すスウェーデンがトルコでテロ組織に指定されているクルド人武装勢力を取り締まらない限り、加盟申請を批准しないと警告している。

トルコ外務省はエルドアン吊し上げ事件に抗議し、駐スウェーデン大使を召還。スウェーデン連邦議会議長のトルコ訪問も中止となった。

スウェーデンの地元紙によると、検察は吊し上げ事件について、法に抵触する行為ではないと判断し、刑事捜査の可能性を除外した。

しかし、トルコのチャブシオール氏は事件について、「人種差別と憎悪を煽るヘイトクライムに相当する」と厳しく非難した。

チャブシオール氏は記者団に対し、「スウェーデン検察の決定は極めて不合理だ」と語った。「これは人種差別的な事件であり、完全なヘイトクライムです。したがって不起訴、不調査の決定は国際法違反であり、犯罪を許すことに他なりません」

またチャプシオール氏はスウェーデン政府に対し、「言葉づかいでヘイトに該当するしないと判断して満足しているのなら、大きな間違いだ」と警告した。

北欧のスウェーデンとフィンランドは昨年5月、ロシアのウクライナ侵攻を受け、NATOに加盟を申請した。NATO加盟には現加盟30カ国の承認が必要である。

トルコ政府はスウェーデンとフィンランドに対し、テロ組織に指定禁止されているクルド労働者党(PKK)やその他のクルド人武装勢力の構成員の身柄引き渡しを要求している。

チャプシオール氏は先月、「スウェーデン政府はトルコの懸念に半分も対処していない」と述べた。

ソーシャルメディアで共有された写真には、エルドアン氏を模したマネキンが逆さに吊るされているところが写っていた。

事件後、「ロジャパを支援するスウェーデン連帯委員会」と名乗る組織がマネキンを吊るしたと声明を出した。

ロジャバとはシリア北部と東部のクルド人半自治区の呼称である。

スウェーデンのクリステルソン(Ulf Kristersson)首相は先週、ストックホルムの抗議デモを「NATO加盟を妨害する行為」と呼んだ。

トルコの連邦検察は17日、エルドアン氏の弁護士が提出した刑事告訴状を受け、事件の調査を開始すると発表。スウェーデン当局に必要な情報と証拠を提出するよう正式に要請した。

トルコのエルドアン大統領(左)と米国のバイデン大統領(Getty Images)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク