SHARE:

トルコ、黒海安全保障を巡りロシアとウクライナに警告

トルコ国防省によると、問題のドローンは12月15日に黒海方面からトルコ領空に接近したとされ、「制御不能」と判断されたため、F16戦闘機が出動し人や航空機への危険を避けるため安全な区域で撃墜したという。
トルコ、イスタンブール港(Getty Images)

トルコ政府は18日、黒海地域の安全保障を巡りロシアとウクライナ双方に対して、一層の慎重な対応を求める強い警告を発した。これはトルコ空軍が黒海から接近したドローンを自国領空内に侵入したとして撃墜したことを受けたもので、緊張が高まる地域情勢への懸念が背景にある。

トルコ国防省によると、問題のドローンは12月15日に黒海方面からトルコ領空に接近したとされ、「制御不能」と判断されたため、F16戦闘機が出動し人や航空機への危険を避けるため安全な区域で撃墜したという。ドローンの出所については明らかにされておらず、識別のための残骸回収や技術分析が行われている。

この事件は黒海周辺での戦闘行為が拡大しつつあるとの懸念が高まる中で発生した。ウクライナは最近、黒海上でロシアのいわゆる「影の船団」と呼ばれる石油タンカーに対して水上ドローンによる攻撃を行っており、11月28日には2隻、12月2日にも別の船舶が被害を受けたとされる。これらの攻撃はトルコの排他的経済水域付近で発生しており、トルコ側も影響を受ける可能性から強い懸念を表明している。

トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領はこれらの海上攻撃について、「航行の安全や人命、環境を脅かすもの」と強く非難しており、特に自国の排他的経済水域内での攻撃について重大な懸念を示した。

トルコは地理的に黒海への重要なアクセスを有し、1936年のモントルー条約に基づいてボスポラス海峡とダーダネルス海峡の管理権を持つ。これにより、戦争状態にある国の軍艦の通過には制限が課されるなど、黒海地域の安定に対する責任がある。条約の下で、トルコは紛争が黒海まで拡大することを防ぐため、両国との外交的調整を続けてきた。

今回のドローン撃墜とそれに伴う警告は、トルコがロシアとウクライナのいずれとも関係を維持しつつ、地域の安定を確保しようとする繊細な外交政策の一環だ。トルコはNATO加盟国としてウクライナへの軍事支援も行う一方、エネルギー供給や観光などの面でロシアとの関係も維持している。このため、黒海におけるいかなる軍事的摩擦も地域全体の緊張を増す可能性があるとして、双方に自制を求めている。

トルコ国防省は声明で、「ウクライナとロシアに対して、黒海の安全保障に悪影響を及ぼす可能性のある行動についてより慎重な対応を求める」としており、誤解や偶発的な衝突が拡大しないよう警戒を強めている。黒海は国際的な商業航路としても重要であり、トルコは戦争の「拡大防止ライン」としての役割を果たす意向を強調している。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします