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トルコ外相、SDFにシリアとの合意履行求める「我慢の限界」

問題の中心にあるのは、今年3月10日にシリア暫定政権とSDFの間で締結された「統合合意」である。
クルド人主導の民兵組織シリア民主軍(SDF)の兵士(Getty Images)

トルコのフィダン(Hakan Fidan)外相は18日、シリア・クルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」との関係において、再び軍事力に頼ることは望んでいないとしつつも、SDFに対し、「関連する当事者の忍耐が尽きつつある」と警告した。

フィダン氏は国営放送局TRTのインタビューでSDFをけん制。SDFがシリア暫定政権との合意の履行を遅延させているとして強い不満を示した。

フィダン氏はまず、対話と交渉を通じた平和的解決を望むとの立場を強調した。「我々は単に対話と交渉、平和的手段で物事が進むことを望んでいる。再び軍事的手段に訴える必要があるのを見たくない」と述べたが、同時にSDF側に対して合意の履行を急ぐよう強く求めた。

問題の中心にあるのは、今年3月10日にシリア暫定政権とSDFの間で締結された「統合合意」である。これはSDFをシリア国家構造に統合することを目的としていたが、その実施が大幅に遅れているとしてトルコ側の不満を招いている。

フィダン氏は「SDFは3月10日の合意に対するコミットメントを尊重すべき」と述べ、合意を先延ばししたり改変したりすることなく履行すべきとの考えを示した。

トルコはこれまでシリア北部におけるクルド勢力をテロ組織とみなし、軍事作戦を実施してきた歴史がある。これまで2016年から2019年にかけて、トルコはSDFに対して複数の軍事作戦を行っており、緊張が絶えない関係が続いている。こうした背景からトルコは合意履行の遅れに対して強い懸念を示してきた。

フィダン氏は当事者の忍耐が限界に近づいていることを強調しつつも、依然として平和的な解決を優先したいとの立場を示し、「誰も軍事的手段を望んでいないが、SDFは関係者の忍耐が薄れてきていることを理解すべきだ」と述べた。これはSDFが合意の迅速な履行に応じない場合、トルコや他の関係国が軍事的な選択肢も排除していないとのシグナルとも受け取れる。

SDFはシリア北部の油田地域を含む広い領域を掌握し、イラク・シリア・トルコ国境地帯における影響力を維持している。SDFは対イスラム国(ISIS)において国際的に重要な役割を果たした米国の同盟勢力でもあるが、トルコはこれをクルド労働者党(PKK)と密接な関係にあるとして強く批判してきた。

フィダン氏はSDFとシリア政府との合意が履行されないことで、シリアの国家統一や地域の安定が損なわれる可能性を指摘している。トルコは暫定政権と協力関係を築いており、ISISの脅威に対しても地域全体で対応すべきだと訴えている。

今回のフィダン氏の発言は、アサド政権崩壊後も遅々として進まない統合プロセスに対するトルコの不満を改めて示すものとなった。トルコは軍事行動を望まないとの立場を繰り返しながらも、対話と交渉が進展しない場合にはより強硬な対応も辞さない姿勢を示しており、今後のシリア情勢における緊張が高まる可能性もある。

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