トルコ、ロシア関連タンカーへの攻撃を非難「黒海の安全脅かす」
トルコ政府は先週、黒海で活動していたロシア関係のタンカー数隻が被害を受けたと発表。うち数隻はロシアの「影の船団(shadow fleet)」と呼ばれる、制裁回避目的で運用されるタンカーとされる。
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トルコ政府は3日、黒海でロシア関連のタンカーが相次いで攻撃を受けたことについて、海域の安全保障の深刻な危機を警告し、NATOと連携して対応に当たると表明した。
フィダン(Hakan Fidan)外相はこの攻撃を「非常に恐ろしい事態」と批判。商船を標的とするこうした行為が航行の安全性を根底から揺るがすものであると警告した。
これらの攻撃は過去数日で立て続けに発生し、うちいくつかは空中または水上ドローンによるものだとされる。ドローンによる攻撃がトルコの排他的経済水域(EEZ)内で起きていることを受け、トルコはただちにNATOや周辺国との安全保障協議を呼びかけた。
トルコ政府は先週、黒海で活動していたロシア関係のタンカー数隻が被害を受けたと発表。うち数隻はロシアの「影の船団(shadow fleet)」と呼ばれる、制裁回避目的で運用されるタンカーとされる。これらへの攻撃は通商やエネルギー輸送のみならず、域内の海運全体に大きなリスクをもたらすとの認識が広がっている。
こうした事態を受け、トルコの大手海運会社はロシア関連の海運業務を一時停止した。
トルコは現在、黒海の安全を守るために、域内海運の安全確保や機雷対応などを担う多国間の枠組み構築を進めている。フィダン氏によると、現在は隣国を含む関係国と協力して、海上封鎖や海域の閉鎖に備えた対策を強化中である。これまで比較的安全とされてきた黒海が戦争の影響を受けて「貿易や人の移動に適さない海域」へと変貌しつつあるとの警告が繰り返されている。
外交面でも、トルコは関係各国に対し「これ以上の商船攻撃は容認できない」と厳しく警告。特に、攻撃の原因とされる勢力(公には一部を除き責任の所在が曖昧)に対して、即時行動停止を求めている。
フィダン氏はNATO事務総長との協議の席で、黒海の安全は国際海運の安定に不可欠であると強調した。
一方、これらの攻撃を巡っては、背景にウクライナとロシア間の戦争があり、ウクライナ側が水上ドローンなどを用いてロシアのエネルギー輸送網や“影の船団”を標的にする意図がある、との報道もある。
しかしトルコ政府は、たとえ紛争当事者であっても「商船への武力行為は許されない」との立場を崩していない。
黒海は国際海運ルートとしても重要であり、多くの国のエネルギー供給や貿易がこの海域に依存してきた。その安全が揺らぐことで、世界経済や原油・穀物市場、さらには周辺国の政治的安定にも波及する可能性がある。トルコは現状を「戦争の範囲が拡大しつつある」と捉え、域内の海上安全体制の強化を最優先課題に据えている。
