トルコ外相がクルド組織「シリア民主軍」を批判、統合協議進まず
トルコは平和的な解決を求める姿勢を強調しながらも、SDFが統合協定を履行しない場合には強硬な対応も辞さないと警告している。
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トルコ政府は22日、シリア内戦後の新体制構築の重要課題であるクルド主導の「シリア民主軍(SDF)」と中央政府との統合問題について、SDFが実際に統合を進展させる意思を示していないとの見解を示した。
フィダン(Hakan Fidan)外相はシリアの首都ダマスカスで行われた外相会合後の共同記者会見で、SDFが統合協議を前進させる意図を示していないと強調した。
またフィダン氏はSDFの行動がシリアの統一を阻害しているとの見解を示し、統合協定の履行に向けた具体的な進展が見られない現状を批判した。
この発言は暫定政権とSDFが3月10日に署名した統合合意の履行をめぐる協議が年内の期限を控えて停滞していることを受けたものだ。この合意はSDFの軍事・行政組織をシリア国家に組み込むことを目指しているが、統合の方法論や軍隊構成の扱いなどを巡り依然として大きな隔たりがある。特にSDF側は独自の部隊として統合を希望する一方、政府は部隊を解体し個別に正規軍へ編入することを求めているとされており、交渉は難航している。
トルコはSDFをテロ組織と見なしており、その核心組織であるクルド人民防衛部隊(YPG)がトルコ国内で武装闘争を続けるクルド労働者党(PKK)と密接な関係にあると主張している。このためSDFの独立した指揮構造の存続や実質的自治の維持は、トルコの国家安全保障にとって受け入れがたいものだとしてきた。
フィダン氏はSDFがイスラエルと何らかの協調関係にあると述べ、これが統合協議の障害になっていると主張した。
これに対し政府側もSDFが統合合意に真剣に取り組む姿勢を示していないと批判している。シリアのシェイバニ(Asaad Hassan al-Shibani)外相は記者会見で、SDFから受け取った最終提案について検討中だと述べた一方、合意の実施に向けた具体的な行動が欠けているとの見解を示した。
またシェイバニ氏は「統合協定の実行が遅れることは、統制が及ばない地域での治安や再建プロセスに悪影響を及ぼす可能性がある」と警告した。
SDFはシリア北東部で長年にわたり統治を維持し、イスラム国(ISIS)との戦いで米国を中心とする連合軍の主要な地上部隊として機能してきた。石油・穀倉地帯を含む広大な地域を実効支配しており、軍事力は数万人規模とされる。だが、統合合意の履行が進まないまま年末の期限が迫る中、政府軍との衝突や緊張が続いている。交渉は米国の仲介の下でも続けられているものの、期限内の合意実現は依然として不透明な情勢だ。
トルコは平和的な解決を求める姿勢を強調しながらも、SDFが統合協定を履行しない場合には強硬な対応も辞さないと警告している。統合協議の行方はシリアの国家統一と地域の安全保障の行方を左右する重大な問題として国際社会の注目を集めている。
