トランプ政権、イスラエルに64億ドル相当の武器売却を計画=報道
米国によるイスラエルへの軍事支援は単なる同盟関係を超え、地域戦略、国内政治、国際外交が複雑に絡み合った構造の中で維持されている。
とイスラエルのネタニヤフ首相(ロイター通信).jpg)
トランプ米政権が攻撃ヘリコプターや兵員輸送機を含む武器や装備64億ドル相当をイスラエルに売却する準備を進めている。現地メディアが19日に報じた。
イスラエル軍は19日、パレスチナ・ガザ地区北部ガザ市での作戦を拡大し、イスラム組織ハマスの関連施設を爆撃したと発表。避難を余儀なくされたパレスチナ人たちは行き場がないと訴えている。
ニューヨークの国連本部では来週、総会が開催され、多くの欧州諸国がパレスチナ国家を承認する予定だ。
国連安保理でもガザ情勢に関するハイレベル会合が開催される。
米ニュースサイト・アクシオスは情報筋の話しとして、「計画されている売却パッケージにはイスラエル軍向けAH64アパッチ攻撃ヘリコプター30機(38億ドル相当)と歩兵用突撃車両3250台(19億ドル相当)が含まれる」と伝えている。
ロイター通信も関係者の話しを引用し、「装甲人員輸送車と電源装置向けの支援部品7億5000万ドル相当も売却手続きを進めている」と報じた。
米国とイスラエルの軍事関係は冷戦期から現在に至るまで極めて緊密であり、米国の中東政策の柱の一つを形成している。特に1973年の第四次中東戦争以降、米国はイスラエルを地域における戦略的同盟国と位置づけ、大規模かつ継続的な軍事支援を行ってきた。
軍事支援の中心は武器供与と資金援助である。米国はイスラエルに対して最新鋭の戦闘機、ミサイル防衛システム、精密誘導兵器などを供与し、イスラエルが中東地域で軍事的優位を維持できるよう保障している。特に有名なのが「アイアンドーム」や「アロー」などのミサイル防衛システムであり、これらは米国の技術支援と共同開発によって実現したものである。イスラエルがガザ地区やレバノンからのロケット攻撃に対処できているのは、こうした米国の支援に負うところが大きい。
資金面では、米国は毎年数十億ドル規模の軍事援助を提供している。2016年にはオバマ政権下で10年間総額380億ドルの軍事支援合意が結ばれ、これは米国史上最大規模の対外軍事援助協定となった。この支援金はイスラエル国防軍の装備近代化や防衛産業育成に使われ、国内経済の一部を支える役割も果たしている。
さらに米国は、国際舞台においてもイスラエルの安全保障を支援している。国連安保理でイスラエルに不利な決議が提出された際、米国が拒否権を行使する例は多く、外交的後ろ盾として機能してきた。軍事演習の共同実施や情報共有の枠組みも強化され、イランやシリアなどを念頭に置いた地域安定戦略の中核を担っている。
ただし、この支援は常に米国内外で議論を呼んでいる。中東和平やパレスチナ問題において米国が中立性を欠いているとの批判は根強く、イスラエルへの軍事支援がガザ紛争などでの民間人被害を助長していると指摘されることも多い。それでも、イスラエルを「民主主義の砦」と見なす戦略的価値や、ユダヤ系ロビー団体の政治的影響力を背景に、米国の軍事支援は今後も続くとみられる。
米国によるイスラエルへの軍事支援は単なる同盟関係を超え、地域戦略、国内政治、国際外交が複雑に絡み合った構造の中で維持されている。