◎シリア内戦の犠牲者は50万~60万人と推定されている。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。
国営シリア・アラブ通信(SANA)は5日、正規軍が中部の要衝ハマから撤退していると報じた。
それによると、正規軍はハマ郊外の地区に撤退し、反体制派の攻撃に備えているという。
イスラム過激派組織「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」とその同盟組織は先週、アサド政権の支配下にある北部アレッポ県に攻め込み、全土を制圧。正規軍への攻撃を本格化させた。
HTSは内戦下のシリアで活動する反政府組織のひとつ。北西部イドリブ県に本部がある。
HTSはこの日、ハマ中心部を攻撃したと声明を出していた。
軍司令部も声明で、反体制派が防衛ラインを突破したため、ハマの部隊に撤退を指示したと明らかにした。
軍は反体制派が自爆攻撃を使って防衛ラインを突破したと非難。SANAは関係者の話しとして、「ハマ郊外の戦闘は激しく、多数の死傷者が出ているものとみられる」と報じた。
またSANAは「正規軍の撤退は市内での戦闘を避けることで市民の命を守るために命じられた」としている。
ハマはシリア第4の都市。南は首都ダマスカス、北は第2の都市アレッポに挟まれている。
アレッポは11月29日、反体制派の電光石火の攻勢によって陥落した。
ハマは2011年のアサド政権に対する革命後、反体制派を撃破した数少ない都市のひとつである。
反体制派の攻勢にはHTSやその他武装勢力、トルコの支援を受ける民兵などが参加している。
反体制派がハマを占領すれば、南方50キロほどに位置するホムスへの攻撃が容易になる。反体制派は10年前にホムスから撤退した。
ハマの西側はアサド政権を支援するロシアや民兵の拠点が数多くあるラタキア県に接している。ラタキアにはロシアの空軍基地があり、中東と地中海におけるロシアの勢力拡大にとって重要な拠点のひとつとみなされている。